京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3923 北アルプス横尾本谷右股から槍ヶ岳天狗池へ

2021年10月3日(日)~5日(火)

f:id:hirasankun:20211007181720j:plain

天狗池に映る逆さ槍

【場所】北アルプス 槍穂周辺

【メンバー】CL 43期 丸山 弘、63期 尾上 実 計2名

【行程】3日(日)20:00 山科駅前集合〜ひるがの高原SA仮眠

4日(月)快晴 4:00 あかんだな駐車場へ移動〜5:50 タクシーで上高地へ〜6:30 上高地BT出発〜9:30 本谷橋〜12:30 黄金平〜14:30 天狗のコル〜15:30 天狗池〜16:50 ババ平テント場着

5日(火)快晴 5:30 ババ平テント場発〜7:30 横尾着〜徳沢・明神池経由で河童橋へ〜10:30 上高地BT着〜11:30 あかんだな駐車場着〜入浴・昼食・帰京

f:id:hirasankun:20211007182428p:plain

【記録と感想】43期 丸山 弘

秋は仕事の繁忙期のため長年実現しなかった紅葉の北アルプスをようやく訪れることができた。天気は二日とも快晴。気温も上高地で10度程度と快適、紅葉は真っ盛りで、平日にもかかわらずかなりの人出で驚いたが、本谷橋からは全く人影はなく。雄大な横尾本谷カールの見事な錦繍も天狗池の逆さ槍も我々二人だけで満喫できた。

カール内はダケカンバ、ミネカエデ、ナナカマドの黄・赤にところどころハイマツの緑がアクセントになってまさに絶景。振り返れば屏風の頭から前穂、見上げれば横尾尾根から南岳の稜線が美しい。涸沢カールを囲む北穂・涸沢槍・奥穂・前穂といった大スターではないが、何より無人の静寂が贅沢だ。

本谷橋から天狗のコルまでは距離2,900m標高差900mのプチバリエーションルートなのでマークや人工物はない。ルートはシンプルで大きく間違える余地はないが天狗のコルへの登りはガスがあれば目標を定めにくいかもしれない。

カールまでの沢沿いは一カ所大岩の乗越しがあるが、ロープを出すような箇所は無い。ただし右岸と左岸を何度も行き来するので水量が多いときは難しくなるだろう。今回は数日好天が続いたので水量は少なく靴を濡らすことはなかった。

f:id:hirasankun:20211007181952j:plain

屏風の頭と前穂北尾根

カール内は低木の間を縫って草つきとガレ場を直登し一般登山道の天狗のコルへ抜ける。

コル手前の200mくらいは平均斜度約35度(野沢温泉スキー場のチャレンジコース上部くらい)のわりにガレは不安定、草付きはましだが、足を滑らせると大きく滑落しかねない地味な核心部でかなり神経を使う。

f:id:hirasankun:20211007181906j:plain

カールから見上げる天狗のコル

草付き中心に登り、最上部はハイマツ沿いの岩場を選んで稜線に出た。ある程度底の堅い靴の方が草付きでスリップしにくいと思われる。全体的に雨の後にはお勧めしないルートだ。先日の地震で浮石が増えていると思われるので落石にも最大の注意を払いたい。

もちろんテント泊禁止地域なので緊急事態に限るが、トラブルでビバークするならカール東側下部の低木帯の草地が比較的平たんで落石の危険が少ないだろう。

天狗のコルからの下りは一般登山道を一時間ほどで天狗の池に降りた。評判どおりの絶景に感動。この季節には回り道する価値ありだが、キャンプ禁止なので南岳まで登りきるにしても槍沢にもどるにしても早い時間帯に通過しないと厳しい。

我々はババ平に降りて5時前に到着。平日なのにババ平キャンプ場もほぼ満員だった。連休などはさぞ大変だったろう。

翌日は夜明けとともに出発し、途中明神池によって写真をとりながら散策気分の下山となった。

今回は尾上さんと初めてご一緒させていただきましたが、体力も余裕で話題も豊富、終始楽しい山行にしていただきました。また、朝タクシーを拾いに走っていただいた機転で日没前にテント場に到着できました。私の体力不足による亀ペースは申し訳なかったのですがどうぞご容赦ください。2日間どうもありがとうございました。

f:id:hirasankun:20211007181821j:plain

天狗のコルから槍ヶ岳方面

【感想】63期 尾上 実

バリエーションルートというものを一度は歩いてみたいと思うようになってきた折に、タイミングよく例会が発案され、調べてみると何とか小生でも行けるのではと思い参加させていただきました。

本谷橋までは一般道で登山者で混み合っていたが、本谷に入って沢を登り始めると我々二人きりになった。ここ数日雨が降らなかったので幸い水量は少なく、足を濡らすことはなかったが、そうでなければ足を濡らしたり、もっと巻道に回らなければならなかっただろう。またリーダーの定期的に先を観察する的確なルートファインディングのおかげで一度も後戻りすることもなく行けた。私はただリーダーの後をついて行くだけでよく、難しい箇所もなく、黄金平手前の小滝右側のフィックスロープ付きの大きな岩越えをするのが唯一の岩登り感覚の箇所だった。

黄金平の草原とせせらぎの楽園のような箇所からは、薄い踏み跡が有り少しブッシュ気味を越えると2,400mの広い本谷カールの底に出た。そこから目指す天狗のコルまでの300mは一望出来、ルートを見定めることができるが、見れない天候の時は手こずりそうである。最後の詰めの200mほどは傾斜がキツく、砂利か低い草付きの崩れなさそうな箇所を選びながら踏んでいく、神経を使う登攀となる。最後はハイマツ脇を行き岩を越えてコルに出た。私はリーダーにひたすらついて行っただけですが。

あとは通常ルートを天狗池経由で下るのみだった。

このバリエーション部分は沢登に等しい感じで、ゴム底の沢登シューズで行けば濡らしてもよく、最後の詰めも滑りにくく歩きやすかったのではと感じた。

黄金平の地点でもう結構疲労が蓄積してきており、天候も良く紅葉の景色も最高の2人じめ状態で、ここでゆっくりしてはと思っていたが、リーダーの本日中にババ平に到着するという意思に負け、小休止後に天狗のコルに向けて急登に臨んでいった。この時はリーダーの固い決意と粘り強さに敬服した。

お陰でビバークすることなく、明るいうちにババ平に到着でき、次の日は散策を楽しみながら早く帰ることが出来た。私一人なら途中でビバークしていたと思う。

丸山さんには経験豊富な知識で色々ご指導いただき、テント就寝中には顔に足を投げ出したにも関わらず優しく追いやって下さったりと気を遣っていただきました。お陰で楽しい山行でした。