京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉西上州の旅(大岩・碧岩&大ナゲシ北稜)

2019年11月1日(金)~4日(月)

【メンバー】S.U 他5名 計6名

【行 程】11月1日(金) 京都=松本(泊)

11月2日(土) 松本4:00=南牧村=碧岩登山口(三段の滝入り口)7:00-三段の滝8:10-大岩10:30-碧岩11:45-三段の滝13:00-登山口14:00=ヴィラせせらぎ(温泉)

=野栗キャンプ場(泊)

11月3日(日) 野栗キャンプ場6:00=赤岩橋手前登山口6:30-野栗沢諏訪山9:50-小ナゲシ12:20-大ナゲシ13:20-赤岩峠14:30-赤岩橋登山口16:20-駐車地点16:30=浜平温泉しおじの湯(温泉)=松本(泊)

11月4日(月) 松本=木曾せせらぎの四季(温泉)=帰京

【記 録】59期 S.U

西上州ってどこ???関西人にとって全くのブラックボックスか?よーするに、長野県の東側、南は埼玉県に隣接する群馬県の西部エリアのこと。西上州のお山の魅力は岩と藪。関西のお山ではまず見られない特異な岩山が連なるエリアである。岩稜を攀じ登り、時にはロープを使い、藪の中にルートを求め、山勘を駆使してルートファインディングというような登山本来の冒険心を満たしてくれる。また、ひとつひとつのお山は小さいので麓のキャンプ場をベースに日帰りで駆け抜けられるのも大きな魅力である。このエリアのメジャーなお山は妙義山荒船山日航機の墜落した御巣鷹山。さらには西上州の名物はかかあ天下と空っ風、木枯し紋次郎の故郷ってとこかな?

11月、そろそろ木枯らしが吹き始めるころ、西上州のお山はベストシーズンを迎える。冬晴れの真っ青な空の下、雑木林の陽だまりでCafé Timeもよし、ふかふかの落ち葉を踏みしめて、さあ行こう!

11月2日(土曜日)

午前4時、松本市内の合同庁舎に全員揃ったところでクルマ1台に乗り合わせ出撃。西上州のお山を楽しむ参考書として、山と渓谷社 “藪岩魂~ハイグレードハイキング~”がお薦め。登山口の駐車スペースに上手くクルマを停めることが出来、三段の滝に向かってスタート。エアリアマップによると三段の滝までは沢に沿ったハイキングロードとなっているが、先の台風で登山道はほぼ崩壊。適当にルートを拾って、沢を何度も渡りながら三段の滝に到着。ここから滝の右側の急斜面を高巻きして滝の上部に抜ける。綺麗な雑木林の尾根筋を辿り岩稜に出ると大岩が現れる。

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▲雑木林の陽だまりの尾根

大岩に行くのには中央の岩稜を三点確保で越えるのであるがホールド充分で見た目ほど困難ではない。

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▲藪と岩尾根

大岩の山頂に立てばコルを挟んで碧岩が聳え立つ。碧岩は参考書によると西上州のMatterhornと言われているらしい。大岩の山頂から見ると優雅な中にも毅然とした佇まいを持って屹立している。一旦、コルに下降し、いつ誰が固定したのか解らない様な、色あせた固定ロープを頼りに山頂に到達する。下山も気を抜けない。固定ロープが切れないことを祈りながら慎重に岩稜を下降。沢筋を三段の滝まで来て、ようやく緊張感がほぐれ大休止。

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▲碧岩 

ここまで来れば駐車場まであとわずか、無事下山となった。

11月3日(日曜日)

今日のルートの大ナゲシ北稜は “藪岩魂” の中で最高難易度のルートである。赤岩橋手前の空き地に駐車し身支度を整えて6時30分にスタート。沢沿いに踏み跡を辿り、雑木林の尾根に取り付く。当然のことながら、明瞭な登山道など無いに等しく、僅かな踏み跡をコンパスと地形図&参考書の略図を見ながらルートを探る。尾根に上がれば、これから大ナゲシの山頂に通じる北稜となる。北稜に踏み込んで少し行くと尾根は切れ落ち、懸垂下降のポイントが出てくる。

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▲懸垂下降のポイント
チョッとだけ空中懸垂をまじえ難なくクリア。行く手に何度も岩壁が立ちふさがり、岩壁の弱点を見つけながら尾根を行く。この辺り、山勘が大いにモノを言う。大ナゲシ北稜の最初のピーク、野栗沢諏訪山の朽ちた祠でちょっと一息。いよいよ北稜の核心部となる。ルートファインディングの実力が試されるところ。岩壁を上手く回避し、安全に尾根を辿れるかどうかが勝負どころである。

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▲岩壁の間のルンゼを行く

山頂からやや北に戻り、派生する支尾根をトラバースするのであるが、トラバースのポイントを決めるのに1時間ばかりのロスタイムとなった。補助ロープを固定し、シュリンゲで手掛かりを作成しトラバースの安全を確保する。トラバースの後、尾根に戻ったところで標石7番を発見!ルートが確認できてホッとする。岩壁の中ほどのルンゼを越え、ヤセ尾根を通過して岩場を登りきると、ようやく大ナゲシ山頂に辿り着く。山頂からは西上州の山々が重なり合って続いている。ここから先、下山はエアリアマップでは実線の登山道が記されているが、そこは西上州のお山、比良や北アルプスとは訳が違う。踏み跡を外さない様に斜面を滑り降りたり、荒れ果てた沢筋を沢に転落しない様にトラバースしたり、最後まで緊張を強いられる。

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▲大ナゲシ山頂

 林道の終点が見えてきたところで、やっと緊張がほぐれるのであった。夕暮れ時、登山口の駐車ポイントに到着。

【山行メモ】

・西上州のお山は、標高1000m~1500m程の低山ゆえ、山行の時期は春先と10月以降の晩秋がお勧め。特に晩秋からは日本海を越えてきた季節風上越の山々に雨や雪を降らせ、乾燥した空っ風が吹き下ろす冬晴れとなる。真っ青な空と紅葉した雑木林の陽だまりで淹れるCoffeeは格別のものがある。なお、木々が葉を落とした晩秋がルートファインディングに都合がいい。ふかふかの落ち葉のお山も西上州の魅力のひとつである。

・11月半ばになれば下仁田ネギが道の駅や直売所に並ぶ。すき焼きにすると、トロトロになり、甘くってとても美味しい。

・比較的メジャーなルートでは、時折、トラロープや鎖&ロープが設置されている。しかし、大抵のものは、いつ誰がつけたか解らない様な、風雨にさらされ色あせたりしている。整備された北アルプスの鎖場より難易度は高いかもしれない。

・初めての西上州山行は、荒船山や裏妙義、鹿岳のようなメジャーな所がお薦め。まず、西上州のお山の雰囲気を知ろう。