2010年8月7~8日
【参加者】CL上坂 淳一、SL秋房 伸一、AT、小松 久剛、小野 崇広 計5名
【天候】7日 晴れ時々曇り
8日 晴れ時々曇り
【行動記録】小野
6日 23:15京都駅 → 25:45筏場駐車場(仮眠)
7日 5:00起床 → 6:00 筏場出発 → 8:50入渓(ルート誤りによる引き返し等で1.7hrロス)→ 9:20最初のゴルジュ入口 → 12:25 2段15mの滝下(~13:00まで休止)→ 16:50 12m滝上・小枝谷手前 (泊・20:30就寝)
8日4:00 起床 → 7:00 出発 → 10:00 50m 大滝下→ 12:15 大滝上水切れ地 (遡行終了~12:45休止) → 13:35 稜線小笹地 三津河落山付近 → 18:45筏場駐車場 (三津河落山 - 名古屋岳 ? 川上辻- 筏場道 を経て駐車場)
(釜ノ公谷出合の吊橋)
【7日】
経験豊富な上坂L、体力十分な秋房SLのもと、沢登り初心者の小野を含めて、小松がリード(巻き道は時折Tがリード)する遡行となった。(リード小松、セカンド、T、サード小野、そして秋房、ラスト上坂の布陣)
当沢最初のゴルジュは左岸を高巻きし(枝尾根付近まで登りルンゼを通過)沢に復帰。谷は広く落ち着いた感じ。その後も越えやすい滝は直登するが、厳しそうな箇所は無理せず巻いて遡行をテンポよく進める。12m滝下で右岸より巻く、下降は急峻をきたし、懸垂下降で沢復帰。左岸場所に河原でテント一張りには十分なスペースがあり、ここをテン場とする。小松さん仕込みの特性豚汁に会話も弾む。
【8日】
今日はいよいよ50m大滝である。懸念した2条10m滝は右岸から抜け上がり、その後も、昨日同様、厳しい箇所は巻きながら、50m大滝の下に出る。
(釜ノ公大滝)
この滝は下段は広く明るい感じで、上段は直瀑、見応えのある滝である。下から見上げると難なく登攀できる雰囲気をかもし出すが、ザイルを出す。登りだすと、下段部でもその高低差にザイルの選択が正しかったことを実感する。
(大滝の上から台高を望む)
大滝上からは、ガレて落石しそうな所と、固い岩登りのような部分が交互に現れ、途中右岸から藪に入り南方へ進む。急峻な登りで一気に高度を稼ぎ三津河落山ピーク付近の笹原に出る。
稜線からは、遡行した釜ノ公谷が一望出来、改めて達成感に浸る。
下りは、三津河落山から名古屋岳に向かい川上辻から通行禁止の標識を尻目に筏場道に入る。
途中、いくつかの橋崩壊箇所を慎重に渡り、なんとか日没までに駐車場に辿り着く。
【感想】 48期 上坂淳一
ついに来ました、本番第一弾は大台の名溪「釜ノ公谷」。
アプローチ、ルートファインディング、歩行、登攀、ロープワーク、幕営、読図、詰め、下降、チームワークと無数の技術と力量が問われる谷でした。
ギリギリでしたが、全体スケジュールは消化できたので、とりあえずはクリアと言えるでしょう。
いくつかの課題は残りましたが、それを補ったのは、「歩く力」と「チームワーク」ではなかったかと思います。
高巻きやロープ処理にはどうしても時間がかかるものですが、歩行スピードがあれば、余裕を持って行動できます。また、メンバーが個性を生かしてお互いに補いあえば、より困難なルートを克服できます。秋房さんや、Tさん、小松さんたちは、山行を重ねるたびに成長を見せてくれます。
新人(つい2週間ほど前に入会された)の小野さんは、行動面でのセンスもさることながら、この厳しい遡行にも全く物怖じしない精神力は相当なものです。タフな方が多いのが、ここ数年の入会者の特徴のようにも思われます。ぜひ、積極的にいろんな山行にチャレンジしてもらいたいものです。
ストイックな山行を覚悟していましたが、皆様からは小松家秘伝の豚汁や小野さんの自家製オーガニック茄子の田楽など、味覚とともにお心遣いも大変ありがたく頂き、楽しい山行となりました。本当にありがとうございました。
【感想】 52期 小松久剛
遡行1週間前から何かの試験を受験するような緊張感をもって臨んだ夏の本番遡行でした。
山行ごとに何か一つでも出来ることを増やしたいので今回は食事担当をさせていただきましたが、家伝の豚汁を皆さんに気に入ってもらえて何よりです。
遡行そのものについては、滝の1つ1つをとれば比良とそれほど大きく隔たりがあるとも思えないものでしたが、巻きや下山の長さやルートファインディングの難しさ、そしてつめあがった後の爽快さなど総合的に見て、やはり台高の沢であることを感じました。
今回の沢に備えて今年に入ってから6回沢の遡行をしましたが、そこで少しずつ蓄えた沢中での歩行技術やロープワーク技術が今回生かせた点では満足できました。
ただし、何よりも今回残念だったのは自分の精神力・体力の低さと高巻き力の低さで、これに比べて新人の小野さんの秀逸ぶりはずば抜けたものがありました。
こればかりはセンスが無ければ経験で高めていくほかに無いものですので、引き続き鍛錬を重ねます。
一つ目の本番の沢が終わっても、緊張感が抜けません。それは次々週に控えている白川又谷本流遡行が迫ってきているからでもあります。次の沢はどんなに厳しく、どんなに美しい姿を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。
いつも楽しいだけでなく、「身につく」山行を企画してくださる上坂リーダーをはじめ、パーティーの皆さん、ありがとうございました。
【感想】 51期 AT
三級の沢ということで、どれほどのものだろうかと思っておりましたが、入渓口からいきなり巨大な滝に阻まれた谷を巻いて横から入渓するという険悪な入渓口となっており、気圧されてしまいました。
そしていきなり現れた怖ろし気な滝。一段目の奥にちらりと見える二段目滝のすさまじい落ち方にビビらされ、これはかなわんと高巻いた後で再び谷に降りると、そこからしばらくは比良のような平和な渓相が続いたので、そうか三級というのは初めの怖ろしい滝があるから三級で、あとは二級とたいして変わらない様な沢かな?と一瞬甘い考えを巡らせましたが、終盤になって続々と難しい滝があらわれ、ひたすら巻きに巻くということになりました。
これらの滝を巻かずに直登出来れば、かなり時間の節約になり、それにむしろ高巻くより結果的に安全かもしれません。
初めの滝にしても、気圧されずよく観察すればもしや登れたかもしれませんが、そうするともし誤って落下した時に命がありません。
今回の遡行で、現状の自分ではいくらフリーの登攀力を鍛えたところで、ボルダリングレベルの滝にしかその力を発揮することはない、ということを痛感しました。
そこで今後の課題としてはプロテクションを使って安全確保をした登攀(人工登攀も含む)の技術を身につけることだと思いました。
前回荷物が重くて思うように動けなかった反省点から、今回は泊装備にはじまり、スリングカラビナなどのギア類を減らして臨みましたが、これは間違いだったようで、後続安全確保などのルート工作には矢張り必要なものであったと反省しました。(では、荷物が重くて思うように動けなくても良いかというとそんなことも無く、そこは体を鍛えるという結論しか無いのだろうか?…)
二級が三級になっただけでこれだけ難度があがるものなら、四級になるとどうなるの?という興味が湧きますが、行くと生きて戻れなさそうですね。
今回の遡行にしても、パーティーの皆さんの助けがなければ十中八九死亡というところです。
とくに上坂さんの判断力というのは、長く山を登っていないと身につかないもので、上坂さんに導いてもらってなんとか成功した遡行だったと思います。
皆さん、どうもありがとうございました。
【感想】 52期 秋房伸一
今回の最大の反省点は、技術的に困難とは思われない平和な場所で、気の緩みか遡行スピードに対応できない沢歩行技術の問題でか、何でもないところでつまずいてしまい、こけそうになって右手をついてカバーし、そのときは何ともないと思っていましたが、幕地手前の懸垂下降で待機しているころから手首が腫れてきて、幕地についたころには右手が使えなくなってしまったことです。夕食の準備等では完全にお客さん扱いで、何もできませんでした。
沢では、絶対に怪我をしてはいけません。脱出できなくなります。どうなることかと心配し、妻子の顔が浮かびましたが、小松さんにテーピングしてもらい、ロキソニン(鎮痛剤)を飲んで一晩寝たら、翌日は不自由ない状態になっていました。
他に教訓というか勉強になったのは、ロープやお助けの確保についてです。お助けには二種類あって、一つは単純に通過し難いところで助けてもらうためのものですが、もう一つは、通過に困難を感じない場所でも、絶対に落ちてはいけないところで安全確保のために出す「お助け」です。
いつもは私が「お助けお願いします」と言って出してもらっているのですが、2日目の滝の通過で、何も言わなくても上坂さんから「お助けを出すように」との指示がトップにあり、よく状況を観察すると、なるほど、スタンスはそれほど難しそうでなくても、岩が欠けたりスタンスが崩れたりする可能性もあるわけで(実際、その直近でホールドが崩れました)、その箇所で予期せぬスリップや転落が起こると重大な結果が予想されるわけで、そういうところの洞察力と対応がリーダーには求められ、上坂さんの判断力に感服しました。
無事、帰還でき、皆様、ありがとうございました。最終の大滝を見上げ、その後滝上から台高の山々を望む特上の風景は、沢登りでしか得られない醍醐味です。この感動を一人でも多くの人と共有したいと思いました。
【感想】 53期 小野崇広
先週の八淵の滝に続く2回目の沢であったが、不思議と八淵ほどの緊張感はなく心にも若干のゆとりがあった。(バテバテでしたが)。八淵で経験した自身がそのように感じさせたのかと思うと、改めて、急遽八淵を計画して頂いたTさんには感謝したい。
沢歩きにはいろんな要素が試されることを改めて発見したことは、今回の収穫である。特に感じたのはルートの把握である。登山ルートにないところを登ることは認識していたが、巻きの際に、うっかりルートを見誤る危険性がある。不測の事態に備えた十分な体力も必要とされる。
ただ、ロープワークや登攀技術等、沢だからこそ絶対に必要とされる技術があり、参加を重ねて徐々にレベルアップさせたいと思う。
今回は、次への自身につながる大変達成感のある山行きでした。計画頂いた上坂さんはじめ、皆様に感謝します。
また、是非宜しくお願いします。
【追記】CL上坂淳一
新人の小野さんについて、そのセンスについては感想でも述べたが、実は下山後に左足腓骨を骨折していたことが判明した。二日目(8日)の午前中、落石を受けたときに発症したものと思われる。
言うまでもなく、下腿部の骨折は全体重の負荷がかかることから、可能な限りの安静と一刻も早く医師の診断、治療を受けることが望まれる。
再々痛みを訴えていたにも関わらず、「歩けるのだから打撲だろう」と安易に考えて10時間も行動を続けさせたことにCLとしては深刻な反省が必要である。川上辻では秋房SLからの「大台ケ原からバスで下山してはどうか」との進言を却下したことも冷静さを欠いていたかもしれない。団体行動では参加者はしばしば無理をしがちである。今となっては良好な予後を期待するほかはない。
昨年の芦廼瀬川のインシデントに続き、今年もこのような事態に陥ったことはCLのやや前のめりな性向と無縁ではあるまい。こちらは骨折と違って、なかなか治らないものである。これが今後、より大きな事故につながらないことを祈るばかりである。
さて、山行責任者としては言い訳のしようもないところであるが、あえて本件から収穫を見出すとすれば、一つには、稀なことではあるが、わずか2週間ばかり前に入会したばかりの会員であっても、このような人がいる、ということ。つまり世の中はそれだけ広いのである。ましてや大自然の営みともなれば、われわれの知見とはいかばかりであろうか。
もう一つには、登山中に事故があり、救助体制も連絡方法もない場合であっても、「決してあきらめてはいけない」ということ。もちろん、事故を武勇伝にしてはいけないが、山中では適切な処置が受けられないこともしばしばであり、最後の手段として「無理をする」という選択肢は否定されるべきではない。通常の判断ではそうした経験を得ることはないが、今回はCLのミスによって、数少ない機会となったのかも知れない。