京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3131 合宿:沢登り 大峰/白川又川

2011年8月12日(金)夜~8月15日(月)

f:id:hirasankun:20191126140535j:plain

(長淵からフジノトコ間の長大なゴルジュは、個人的にこの山行で最も感動した景色であったが、残念ながらカメラが壊れ写真に撮ることが出来なかった。上のコラージュの様な景色だったので想像してください。)

【参加者】上坂淳一L 寒川陽子 AT 小松久剛 本田勇樹 計会員5名
【天候】 8月13日 晴れのち一時雨
8月14日 晴れ
8月15日 晴れのち雨

f:id:hirasankun:20191126140555j:plain

(長淵:本流ゴルジュの始まり)

 

【記録】 (計時:小松、寒川)
8月12日 20:00京都駅南アバンティ発→23:10行者環トンネル西口で小松車デポ→24:05茗荷谷出合着・幕営

8月13日 4:30 起床~5:35 入渓~6:19 大釜~7:10 十郎谷出合~7:13泳ぎ50m~7:34泳ぎ20m~7:40急流泳ぎ~8:04泳ぎ30m~8:20大滝~8:40巻き開始~10:11巻き上がり完了~10:55取水口~11:40泳ぎ~11:50長淵前~12:45長淵突破~12:55泳ぎ20m~13:00核心滝2m~13:15巻き始め~16:10巻き上がり完了~16:50ゴルジュ奥8m滝手前~17:21河原着・幕営

8月14日 5:20起床・出発6:35→7:40フジノトコ→8:30中ノ又谷出合・高巻き開始→8:45高巻き終了・休憩9:00→
10:20火吹谷出合→10:35休憩50→11:25 10m大滝下→12:05斜瀑5m滝下・休憩25→13:05水晶谷出合→13:10直瀑20m滝下・休憩・高巻き開始20→14:25懸垂下降終了→15:00口剣又谷出合C2・20:40就寝

8月15日
5:30起床・出発7:20~すぐに高巻き開始~8:10出合の滝とその次の20m滝の右岸巻き完了。すぐに岩間の滝左岸巻き開始~8:14巻き完了~9:49 12m滝を左岸から巻く~11:15つめ上がり開始~急なボロボロの岩尾根~13:00八経ヶ岳13:15~13:35弥山~15:30行者環トンネル西口着→16:10上坂車回収→帰京


<8月12日> 記録:小松
 京都駅南のアバンティ南西で集合。
一路、奈良南部へ。飛鳥駅前のコンビニで荷物をすべて上坂車に載せ替えた。
 深夜に曲がりくねった国道309号線を走り抜け、行者還トンネル西口に小松車をデポ。今度は車で帰ってくるのではなく、八経ヶ岳頂上から徒歩で車を取りに来よう、と固く誓いあって前進。
 白川又川林道に日が変わるころに到着。すでに2台ほど車が停まっていた。
少し酒を飲みながら打ち合わせをして就寝。

<8月13日> 記録:小松
 早朝に入渓。河原の石は非常にぬめるがトップの寒川、本田はガンガン飛ばして遡行。
入渓後しばらくは河原とゴーロの混合だが、十郎谷を右岸に分けた後は淵が次々と現れるようになる。泳ぎで次々に突破。
 前回巻いた20m大滝は前回と同じ場所で巻いた。今回は初め、ロープ不要かとも思われたが実際に取りついてみると前回同様悪く、ロープを引いてTがリード。他の4人も続いた。
 11時までに取水口についた場合は長淵突破を試みようという上坂の判断が事前にあったが、取水口についたのがちょうど11時。前進を決定。
 大黒溝谷を右岸に分けて長淵に至る。

 長淵の突破は水泳が得意な本田がまず泳ぎでの急流部分突破を試み、無理であればTがリードで巻きあがるという作戦で挑んだが、2回の挑戦ののち、見事本田が泳ぎで長淵急流部分を突破。このおかげでわずか45分で全員が長淵を突破できることとなった。
 長淵奥の核心2m滝はやはり直登は無理で巻き道を探しあぐねたが、滝の少し手前のリッジを登ることに決定。

f:id:hirasankun:20191126140622j:plain

(本流ゴルジュ核心の2m滝)
 
 Tがリードで取りついてみると残置ハーケンがあった。
 Tがロープを張った後、小松が空身でテラスに上がり全員分の荷物をテラスに上げ、後続も空身で登攀を試みたが、分厚いウェットスーツを装着した寒川が登攀にてこずった。雨も降り始め、日暮れの時刻も近づく中でどうしても分厚いウェットにはばまれて登攀がうまくいかず、最終的には1/3吊上げシステムで寒川を側壁バンド上までつり上げ、全員巻き上がりに成功した。
 側壁の上は奇跡的にバンドが続いており、懸垂下降や、ゴルジュを締めくくる8m滝のかなりきわどいへつりもあったものの無事に大ゴルジュ帯を抜けることができた。
 ゴルジュの上には2mほどの滝が大釜を作っており、これは泳ぎで突破した。
 その上は少し開けた河原となった後、再び大ゴルジュ帯に入るようであったため、ここで遡行を打ち切り、幕営

 

f:id:hirasankun:20191126140652j:plain

(まだまだ続く大ゴルジュ)

 

 奥のゴルジュからの風が冷たく、真夏にもかかわらず寒さで体が震える。
 キムチ鍋に温まり、たき火にホッと一息。
 夜半はゴルジュからのつめたい風にさらされ、寒さであまり熟睡できないままに朝を迎えた。

<8月14日> 記録:T
 朝4:30起床、朝食(雑炊)をとったあと準備して、5:35遡行開始。
 泊地河原の目の前は薄暗い20mの淵になっていて、入渓早々首までつかって泳いで遡上しなければならなかった。
 その後のフジノトコまでの行程は泳ぎの連続で、長い淵や小滝の連続するゴルジュ帯をつぎつぎと泳いでゆく。
昨日の長淵の風景はもちろんのことだが、その上流にはまだまだ長大なゴルジュ帯が続いていて、圧巻の一言である。

 昨日の長淵突破で高い泳力を発揮した本田が先頭に立ち、流れの強い場所はフローティングロープを引いて先に泳ぎ渡り、他のメンバーをロープで引っ張ってもらったりなどする。

 

f:id:hirasankun:20191126140712j:plain

(長淵からフジノトコ間の長大なゴルジュは、個人的にこの山行で最も感動した景色であったが、残念ながらカメラが壊れ写真に撮ることが出来なかった。上のコラージュの様な景色だったので想像してください。)

 

 大きく薄暗いゴルジュを抜けるとあたりが急に開け、広く明るい渓相の河原になった。
 河原には二つのパーティー幕営していて、彼等は大栂山からやってきて白川又谷を遡行するとのことであった。
 フジノトコは広く明るく、確かに幕営に適した場所ではあったが、沢登りの幕営地にここまでの広さは必要としないので「無理にここで幕営しなければならないということはないな」というCLの所感であった。(特に我々は今回タープを使った幕営なので、幕営できそうな場合は途中でいくつも見つけることが出来た。)
 そこから先、歩きやすそうなところを見つけて、徒渉・泳ぎ・登攀・へつりなどしながら進むと、中ノ谷出合に着いたので左岸を高巻いて本流に戻る。
 その後も泳ぎや登攀、徒渉を繰り返しながら遡上していくと、火吹谷出合を過ぎたあたりから少し開けた渓相になってゴーロ帯を歩くが、その後またゴルジュになる。
 いくつかの滝を越えると、前方左岸に漆のような真っ赤な色の壁がそそりたっている。(この赤は近づいてみると苔?なのか、触れてみるとぬめっていた)

f:id:hirasankun:20191126140734j:plain

(火吹谷上流、赤い壁のゴルジュ)

 

 赤い壁のあたりの左岸側壁からは、水がすだれ状に湧き出していて、異様な雰囲気である。
 側壁に挟まれた突き当たりには10m斜瀑でしめくくられていて、この滝は登れそうではあったが、「出来るだけロープを出さず通過すること(スピードアップのため)・危険は避けること」というCLの方針から巻いていくことにする。
 幸い、すぐ手前左岸側壁に階段状の細い水流があったので、そこを登って高巻くとすぐに本流に戻ることができた。
 
遡行中、小松のザックが壊れるというハプニングがあったものの、なんとか修理して遡行再開。
 その後、目の前にCS滝が現れ、登攀困難なため、左岸から巻こうとしていると上から男女二人連れのパーティーが下りてきた。
 高巻きが無理で引き返してきたものと思い一同心配したが、話を聞いてみるとそうではないらしく、火吹谷を遡行するために下降してきている最中だとのことであったので安心して左岸から高巻く。
 そこからしばらく進むと、水晶谷の出合に到着。本谷には20mの大滝があらわれ、滝のすぐ手前右岸にあったガリーから高巻く。落石が多く、神経を使う高巻き。

 無事に巻き上がると、そこから上流の方に向けて斜めに下りていき、沢床手前の崖に突き当たると50mロープ二本を使って懸垂下降する。
 4人が下降し最後に上坂Lが懸垂下降をするときになり、突然二本のロープのうち小松のロープの表皮が切れ、芯がむき出しになってロープが伸びるというハプニングがあったが、切断・落下することはなく、なんとか無事に全員下降できた。
 そこから暫く遡上したところで側壁から吹き出す特徴的な奥剣又出合の滝があらわれた。

 

f:id:hirasankun:20191126140757j:plain

(奥剣又出合の滝)

 

 いっけんするとこの滝が支流にしか見えないが、滝の方が本流の奥剣又谷であり、広い沢筋のほうが支流の口剣又谷である。
 ここで時間はちょうど午後3時になったので、滝のすぐ手前にある右岸の小さな河原で幕営することにする。
昨日よりも暖かく、たき火もよく燃えて熟睡することが出来た。(夕食:カレーとスープ)

<8月15日> 記録:本田
 昨夜の泊地は暖かかったため、比較的良く眠れた。朝食は棒ラーメン、同時に行動食のおにぎりをつくる。12個作ったがTが一つ食べ、11個になった。
 出合の30メートル滝は左手のルンゼから容易に巻いて奥剣又谷に入った。20メートル滝は、右岸から巻く。12メートル滝は、左岸を巻く。

 

f:id:hirasankun:20191126140815j:plain

(奥剣又谷)

 

 右に大きな枝谷が出てきたところで、ルートファインディングが難しくなったため、トップを本田から小松に交代する。水量が少なくなってきたので、ウェットを脱ぐ。
 1:4支流に出合う。休憩をとる。おにぎりを食べる。
 多段45m、2段50m滝はロープなしで通過する。奥ノ二俣を右へ、12m滝で遡行は打ち切り、右岸から巻いて八経ヶ岳への詰めにはいる。
 しばらくは上流部を右に見て登る、岩盤を巻き、何度か尾根を思わせる場所に出てはまた岩盤が現れることを繰り返す。ハイマツと枯れ木が山頂にいよいよ近づいてきたと感じさせる。もうそろそろ尾根かと思うとき、先頭を行く小松から頂上についたとコールがある。急いで登るとまさに山頂標識の前だった。皆笑顔で握手を交わす。
詰めの途中、山頂への直上ルートを外してるのではと雰囲気があっただけに喜びもひとしおだった。記念撮影して、下山する。

 

f:id:hirasankun:20191126140842j:plain

(八経ヶ岳にて)

 

【感想】52期 小松久
 大きく、深く、厳しく、そして美しい白川又川本流にずっと包み込まれていたような遡行でした。
特にフジノトコまでの前半部分はこれまで経験したことの無いような大ゴルジュ帯で、泳ぐにしても登攀するにしても一筋縄ではいかない厳しさを味わいながらも、美しいエメラルドブルーの淵と高々とそびえる側壁の美しさに見とれていました。
 口剣又谷を別けた後の本流は意外と水量も少なく迫力不足でしたが、行けども行けども終わらず、次々に岩盤が立ちはだかるつめ上がりの厳しさには大峰の沢の大きさを見せつけられました。
 そして、最後つめあがった先が偶然ではありましたが八経ヶ岳頂上ど真ん中で、このうれしさはこれまで味わったことの無いものでした。
 
山岳会に入るまでは沢どころか山のど素人で、沢を歩かせたら転ぶわロープワークはできないわ登攀は全くできないわ、という状態でしたが、遡行数の蓄積でなんとか皆さんについていくことができるようになり、頑張ってきてよかったな~と改めて感じました。好きこそものの上手なれとはよく言ったものです。
 全てにおいて的確な指示をいただいた上坂Lをはじめ、ルートファインディングでサポートいただいた寒川さん、登攀で常にリードしてくださったT先輩、長淵を見事泳ぎで乗り切って大幅な時間短縮を成し遂げ、ゴッド後輩になられた本田さん、ありがとうございました。
 いつか今回の遡行を越えるほどの大きな山行ができるようになればと思います。そのために遡行の蓄積を今後も積もうと思います。

【感想】48期 上坂淳一
 僕自身の本格的な白川又挑戦としては、これで三度目となりましたが、今回初めて谷の全貌を知り、その荘厳な美しさに改めて感銘を受けました。
 それは、巨岩と激流の本流部、逃げ場のない上流部、そして最後まで気の抜けない詰めと、単に体力的技術的問題ではなく、圧倒的な自然の素顔であり、またそれにちっぽけな人間が挑戦する沢屋魂とでもいうべき、SPIRITを試されているような三日間でした。
 
 初日に核心のゴルジュを早々に突破してから、CLとしては貯金を確保しつつ、八経への包囲網をジワリジワリと絞るように攻めましたので、突破力のあるメンバーには少々不満もあったかと思いますが、それも本番ということでご理解いただければと思います。
 今回はTさんの登攀力、本田さんの泳力、小松さんの読図力などの多彩なタレントのおかげで、完璧なスケジュールで遡行できました。中心となったのは、会期の浅いメンバーで彼らの情熱と努力には本当に頭の下がる思いです。
 しかし、個人の力に頼るところが多かったと同時に、またパーティの総合力を発揮できたという言い方も許されるのではないかと思います。そういう点では参加5名とはいえ、当会のアチーブメントを確認できたという意味で合宿の名に恥じない山行ではなかったでしょうか。

【感想 48期 寒川】
 早めから参加表明をしていたが、先月参加した海ノ溝谷の例会で水の冷たさとゴルジュの恐ろしさを思い知ってから不安になり、前準備として考え得られるトラブル対策を講じた。
 その一つが5mmウェットスーツ。暗い淵で鼻歌を歌えそうな位の保温力だったが、それを凌駕する動きにくさのため、核心部以外は完全にお荷物となってしまった(しかも核心部のムーブに支障をきたした)。
 
 メンバーが猛者揃いのため、遡行・登攀いずれにおいてもフォローを受ける立場であったが、必要箇所以外のロープワークを省略できたため非常にスムーズに進む事ができた。
 安全の確保とスピードという相反する要素を考慮した上でのリーダーの判断が経験豊富ならではのものであったこと、Tさんと小松さんの沢に対する熱意とRF力(2年前にご一緒した芦廼瀬例会が嘘のようである)、本田さんの突破力と、メンバーの良さが光った印象深い山行となった。私はといえば、強いて言うなら日を重ねてもほぼ低下しないパフォーマンスが救いだったと言うべきか。
 ゴルジュや淵の規模には圧倒されるものがあり、縦走とは違う種の山に対する畏敬の念を抱いた。
登攀できないなら巻けばいいと思っていたが、この合宿を終え、行ける沢を広げてみたいというのが今の心境である。

【感想 51期 T】
 今回の遡行は、(メンバーに寒川さんがいたこともあってか)いつかの芦廼瀬川を彷彿とさせる楽しい冒険的遡行でした。
 去年敗退してからというもの、何度も頭の中であの長淵を思い出して頭に浮かべたものでしたが、それがまた目の前に迫り、そしてそれを越えて未踏の地に進んで行く、というこの感覚はとても不思議なもので、これは敗退してみないと味わえない気分であったと思います。 
 長淵では本田さんが見事流れの強いところを越え、大幅に時間短縮となりました。
 これは本田さんの泳力、身体能力の高さという要素はもちろんですが、なにより「いっけん無理そうでもまずは試してみた」結果だったのではないかと思います。
 我々はあの淵を泳ぎ越えることは出来ないと決めつけていましたが、新しく来た本田さんはそれにとらわれず、見事あの淵を泳ぎ越えてみせたのでした。
 今回のメンバーはいずれも沢登りに慣れた強いメンバーで歩みも早く、ついていくのが大変でなかなか写真を撮る機会にめぐまれませんでしたが、そうこうしているうちに荷物が浸水してしまって、カメラや携帯電話が壊れてしまって散々でした。
 そこらへんの沢なら浸水しないような防水装備でしたが、白河又谷の長大なゴルジュの水圧には耐えられなかったようです。
 その後、乾かしたら命の次に大切な?カメラはなんとか復活しましたが、携帯電話(iphone)は完全に壊れてしまい、防水の甘さを思い知ることになりました。しかし、それだけの壮絶なゴルジュの風景を目の当たりに出来、とても感動しました。
 これも上坂リーダーはじめ、皆様のチームワークのおかげです。ありがとうございました。

【感想 53期 本田】
 はじめての沢中での泊まり山行でした。川原での焚き火は開放的で新鮮でした。厳しい自然の中で火を囲むのは生活の原点のような気がします。朝も夜も変わらず水しぶきをあげている滝は偉大だと思いました。
 前半の水量の多い本流ゴルジュのスケールは圧倒的でした。泳ぐと心地よくて、どこまでも泳いでみたいという気持ちになりました。長淵の突破については、登山を始める前にただ目的もなく一人でしていた水泳がこんな形で役に立つとは考えもしませんでした、先入観なく取り組めたことと、海の溝の経験が良かったのだと思います。
 最後ちょうど山頂に登りつめたときは感動的で最高のエンディングでした。皆様ありがとうございました。

f:id:hirasankun:20191126140948j:plain