京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉《山紀行735》 若越国境尾根

一昨年秋の関西百名山シリーズで赤坂山に登った時に乗鞍岳から見た野坂岳への稜線に魅かれた。新緑萌えだす前に若越国境尾根の縦走を敢行した。

20110429若越国境2

写真: 葦谷山と若越国境尾根(P756付近より)

 

 

《山紀行735》 若越国境尾根       平成23年4月29日(金)

48期 山本浩史(単独)

一昨年秋の関西百名山シリーズで赤坂山に登った時に乗鞍岳から見た野坂岳への稜線に魅かれた。新緑萌えだす前に若越国境尾根の縦走を敢行した。

 

【行  程】 京都4:00=6:30黒河林道(自転車デポ)6:33=6:51関集落大瀬川畔7:08~8:11萱尾三角点8:16~9:06芦谷三角点9:14~9:50 P744~10:48野坂岳11:09~11:43茶屋谷山~12:22葦谷山~13:32林道跡~15:13三国山15:17~15:55黒河峠~16:44黒河林道16:53~(自転車)~17:34関集落大瀬川畔17:53=18:06敦賀温泉19:34=21:35京都

【登山データ】 天候 曇り一時小雨のち晴れ

歩行22.7㎞ 9時間36分 自転車 11㎞ 0:41延登高 1,768m 延下降 1,608m 4座登頂

20110429若越国境地図

 

今年は雪が多かった。GWとなっても野坂山地の山肌はまだ白さを見せている。滋賀県のマキノから黒河林道で黒河峠に自転車をデポし敦賀市関の関峠手前を5時に歩き出す計画を立てた。しかし天気予報は9時頃から晴れとのことなので出発を1時間遅くした。そして黒河林道に入ると峠の200m程手前で通行止めになっており敦賀側へは抜けられない。仕方なく国道で敦賀側に回り込み山集落から黒河林道を北から入った。今年の気象実態を甘く見過ぎていたようだ。集落の終端から5㎞程入った処に2台の車が駐車しており、その先にトランクを開け道の真ん中に止められた福井ナンバーの車、林道の先の方でデブリの処理をしている。

 

先へ行くことは諦め此処に帰りの足になる自転車をデポし国道27号線の旧道が越える関峠を目指した。峠付近には駐車スペースはなさそうなので、そのすぐ手前の関集落の大瀬川の林道を入った処に車を置いた(標高95m)。京都を出るときは晴れていたが段々曇り出し終に雨が降り出した。こんな筈ではなかった。空を見上げて恨みながらも、そのうちに止むだろうと高を括り、雨具の上だけ着て出発した。

 

この尾根に道はない。斜面を適当に這い上がり稜線を歩く。針葉樹林で歩きやすい。関峠からの国境稜線を忠実に歩きたかったけれど仕方がない。標高330mで国境稜線に合流し南に進む。何やら踏み跡らしきものが見え隠れするが、鹿糞が散乱しているので獣道か? 最初の目標地点の3等三角点「萱尾」の峰(540m)は標石が頭だけ出して埋まっていた。雨は止んだが藪漕ぎは続き雨具は脱げない。次の目標の4等三角点「芦谷」の峰(682m)を目指す。登山道の真ん中の水溜りに黒い玉のある紐状のものが無数にある。その傍にはじっと動かず蟇蛙がこちらを睨んでいる。此れは産み付けられた卵だ。人の通らない稜線にはこんなこともあるのだ。

 

カタクリ、スミレ、イワウチワ、馬酔木が花を咲かせているのは良いが、次第に密生した灌木帯となり、しかも直下に到ると急登となり難渋する。漸く這い上がった。芦谷ピークは東側の展望がよく真向かいに野坂岳を望むことができる。山頂部に雲を頂き山肌もガスっぽい。こちらから見る野坂岳は針葉樹の間に広葉樹の線がありそれが田圃の畔道のように幾何学模様を呈している。植林時の悪戯のようで面白いものだ。この先野坂岳まではまだ遠い。稜線に登山道らしきものは見えない。この状態のまま3.5㎞先の野坂岳まで行きつけるのだろうか。7年前信越国境の白砂山から佐武流山までの激藪6㎞に9時間半も戦ったことが頭を過る。でも此処まで来て戻るのは嫌だ、行くしかない。

 

藪の薄い処の微かな獣道を辿り井の口川の源頭を巻きこむように左にカーブする。2.5万図にある744mピークは存在感がある。次の目標はそれだ。激藪ではなくなり歩行が捗り1.7㎞を50分で歩けた。P744は展望もないので通過し東に向きを変えて鞍部に下りる。標高660mから250mの登り返しとなる。此処が最大の難所で獣道もなくなり全くの灌木帯で、しかも雪国すべての木は斜めに生えている。戦いの末、藪の向こうに見えた登山道、救いの神のように有難かった。広い山頂には3組の登山者、泥んこになって登ってきた私はさぞ奇異に見えたことだろう。

野坂岳(914m)は1等三角点「野坂岳」が置かれ、かなり大雑把な方向指示版もあった。すぐそばに野坂嶽大権現を祀った避難小屋がある。時刻は10:48、苦闘の7.5㎞だったが、3時間40分で登れたのでまずまずだろうと気を良くして、これなら三国山まで行けると意を強くした。もう雨具は要らないだろう。晴れモードに転換し南へと足を踏み出した。登山道に飛び出して来たのは何処だったかと探すが何の印もない。この先の送電線までは昨年6月の関西百名山シリーズで歩いたルートだ。山集落への登山道を分岐するとまたしても道はない。忠実に稜線を進むと踏み跡が見え隠れ、頻繁にテープがあり、稀に人が入っているようだ。

 

野坂岳までの稜線に比べるとハイウェイのような道で野坂岳から35分で茶屋谷山(727m)に達した。山頂標識はなく4等三角点「茶屋谷」が山頂であることをアピールしているだけだ。この付近にはショウジョウバカマやイワウチワ、バイカオウレンが雪解けに誘われ咲いていた。更に南下を進め葦谷山に近づくと残雪の量が増し稜線でも雪を踏む処が出て来た。150mの標高差を登り返して葦谷山(866m)に達する。達したと思ったが偽ピークでその先にまだ高いピークがある。損した気分で山頂に達すると何と人がいた。三国山から来たご夫婦で以前北から来ているので今回、道を繋ぎ黒河越へ戻ると云う。この先はブナ林が良かったとの情報を得て先行した。

来た人がいるので一寸気が抜けてしまったのか地図を確認しないままテープに導かれて歩いていると方向転換するところを間違えてしまい段々道が怪しくなり気付いた時にはかなり下ってしまっていた。登り返すのも面倒なので、そのまま下り続け黒河川支流に達し、嘗ての林道跡に出た。崩れるに任せ、木が蔓延り最早その機能は完全に失っているが、所々にテープが巻かれているので、黒河林道の楓祗渓(ふうしけい)橋から分岐する林道の果てであるようだ。2.5万図の通りの処で林道が途切れ対岸に渡りトラバース気味に斜面を這い上がると国境尾根に復すことができた。

 

本来通るはずだった尾根の鞍部からこの先のP756までは200mの登り、この部分は深く抉れた登山道がありその中はしっかりと残雪が詰っている。登山道は急斜面をジグザグに付いていてその中を通るしかない。葦谷山で出合った二人のトレースがありもう迷わない。空は漸く晴れて来た。P756東側の雪田から葦谷山を振り返えると2本の送電線が稜線を横断し乗鞍岳の方に繋がっている。P827に達する頃には疲労が出て来て休憩が必要、栄養補給をして元気を取り戻した。

いよいよ三国岳(876m)だ。北側一面の雪田の横を這い上ると山頂、いや此れも偽ピークでもう一つ先が山頂で藪の中から飛び出した。これで若越国境尾根は高島トレイルに繋がった。因みにこの三国岳は若狭、越前、近江の三国を指す。山頂にいた男性が一人怪訝な顔で出迎えてくれた。縦走路へ下る道もしっかり雪があった。黒河峠に下ると車は一台もないがテントが一張り、スパッツなどが干してあったので人がいるみたいだ。林道のマキノ側は通行止めだったが、敦賀側もやはりダメなのだろうか。もう休憩は必要ないそのまま林道を下り自転車デポ点まで歩く。歩き出すとすぐ林道はデブリに埋まっている。これでは車は通れない。その後も残雪や倒木、落石で簡単には開通できそうにない。

 

楓祗渓(ふうしけい)橋まで来ると葦谷山の南の鞍部で間違って下りてしまった林道跡が分岐している。通行止めの表示があり車は入れない。峠から4.5㎞、朝デブリを退けていた福井ナンバーの車がまだ止まっていた。デポ地点はこの先200m程の所だ。登山はまだ終わらない。自転車11㎞が残っている。ダートの黒河林道を下り里に出ると左手に見える野坂岳が素晴らしい。左に曲がると“ふるさと夢街道”、ほぼ平坦だが関集落に近づくとまた登りでもう大変、6段変速で良かった。

それにしても今日の縦走はキツかった。久々に疲労困憊した。敦賀IC近くにある敦賀温泉“リラ・ポート”に立ち寄りゆっくり温泉に浸かり、国道161号を走り渋滞もなく2時間で帰京した。

 

20110429若越国境1

写真: 野坂岳(芦谷三角点峰より)

 

20110429若越国境3

写真: 三国山(三国山北稜線より)