毎年7月の三連休を利用して北海道山行をしているがこの4年程は天候に恵まれない。北海道に梅雨はないと云うのは最早過去のことのようだ。温暖化の影響なのだろう気候が変わってしまった。今回は、ニセコ連峰雷電海岸への縦走と長万部岳、狩場山を目指していたが、狩場山と長万部岳のみの山行となってしまった。
写真: 鉱山跡と黒松内岳
[個人山行]《山紀行742》 狩場山・長万部岳 平成23年7月14日(木)~18日(月)
48期 山本浩史
毎年7月の三連休を利用して北海道山行をしているがこの4年程は天候に恵まれない。北海道に梅雨はないと云うのは最早過去のことのようだ。温暖化の影響なのだろう気候が変わってしまった。今回は、ニセコ連峰雷電海岸への縦走と長万部岳、狩場山を目指していたが、狩場山と長万部岳のみの山行となってしまった。
前日(7/14): 小樽観光
【行 程】 京都5:46-7:11関西空港8:05→10:00新千歳空港10:34-11:46小樽12:00=12:20鰊御殿13:22=13:29小樽総合博物館14:27=15:00余市はまなす温泉15:45=16:50▲神仙沼レストハウス(車中泊)
関西は今日も猛暑の予報で早朝より日差しが強い。関空を飛び立ち富士山や南北アルプスなでは景色を楽しめたが、新潟の沿岸に出る頃には雲が出だした。そして新千歳空港は雨の中、快速“エアポート”で小樽に向かい駅レンタカーを借りた。今日は登山口ニセコ連峰の登山口神仙沼に行くだけなので時間がある。雨も上がったので小樽市内を観光して行こう。
以前大雨で行けなかった鰊御殿と静号のある小樽総合博物館、古代人の線刻壁画のある手宮洞窟に立寄った。博物館の前にあるホームセンター“ホーマック”でEPIガスを仕入れ国道5号線を走った。ニセコ辺りの温泉に入ろうと思っていたが遅くなっては日帰り入浴はできないかもしれないので余市町の海岸にある“はまなす温泉”に立寄った。
岩内側からパノラマラインに入りニセコ連峰に分け入る濃霧で視界は50mも利かない。果たして明日は登れるのだろうか?
1日目(7/15): 狩場山
【行 程】 ▲神仙沼レストハウス4:36=6:31賀老高原6:57~7:10賀老ノ滝7:13~8:26千走登山口8:28~10:27南狩場10:30~10:50狩場山11:10~11:26南狩場~13:00千走登山口13:05~13:52賀老高原14:07=15:08宮内温泉15:45=16:40▲河鹿トンネル南口(車中泊)
【山データ】 天候 霧一時小雨 歩行 19.8㎞ 6時間55分 延登高 1,264m 延下降 1,264m 2座登頂
夜少し雨が降ったようだ。しかし霧は相変わらずで、30㎞に及ぶ長距離縦走の意欲は萎んでしまった。こんな日は単発の山に限ると、長万部岳に行先変更して、国道5号線を南下した。ラジオの天気予報は今日曇りで明日、明後日は雨と言っている。黒松内辺りでまた気が変わり、少しでも天気のいい今日、狩場山に行くことにした。日本海側の島牧村に抜けて賀老高原を目指した。予定をころころ変えるので朝から170㎞も走った。
賀老高原(510m)は整備されたキャンプ場があるが、悪天候で1張しかテントは無かった。まずは賀老の滝に足を伸ばす。流量の多い千走(ちはせ)川本流の瀑布で日本の滝百選に選定されている。前日の大雨や雪解け水を集めた豪快な眺めは谷底から見る。駐車場から南に進み遊歩道を下りると展望台がある。駐車場から標高差150mを下るので帰りが辛い。
千走林道に合流すると道はダートになって、延々5㎞足らずの道のりを歩く。南狩場から流れ来る枝沢を橋で渡るが、上の方を見ると此処にも滝がある。名も知られぬ滝ながら、これも豪快だ。後で知ることになるが此の川の上流は大きな雪渓が広がり登山道が横切る。豊富な雪解け水に大雨の水を集めているようだ。
やがて林道は千走川を渡り右岸へと消えて行く。狩場山新道登山道は林道を見送り橋の手前から斜面に取り付く。5台ほど止められる駐車場には横浜ナンバーと静岡ナンバーの車があり心強い。登山ポストがあるが用紙がなく割愛、登山口(695m)には光センサーがあり登山者の人数でもカウントしているのだろうか。いきなりナメ滝が出てくる。昨日の雨は相当降ったらしい。登山道に被さる草木はたっぷり露を含み、雨具の下を穿いて来たのは正解だった。
1合目から要所要所に合目表示があり、期待していると一つ飛んだりで全部揃っているのかどうか。傾斜は徐々にきつくなりマイヅルソウやハイオトギリが目を楽しませてくれる。標高が1,100mを越えた頃、雪渓が現れた。渡島半島の日本海側にあたる檜山地方は雪の多いのとヒグマの多いので有名。まだヒグマには出くわしたことは無いがこの標高でこの豊富な残雪には驚かされる。悪いことにガスが濃く、雪渓の横断に神経を使う。まず進むべき方向が分らない。先に登っている人がいるはずだが最初の1、2歩でトレースが判別できなくなり随分探し回った。滑落すると何処まで行ってしまうのか、其れも見えない恐怖だった。大きな雪渓横断が2回あり何とか夏道に出ることができた。
島牧村とせたな町境の稜線に達した辺りに9合目標識があり、岩がゴツゴツしている。少し行くと進むと樹林の中に“南狩場1,464m”の標識がぶら下がり一つ目のピークに着いたことを知る。此処からの稜線歩きはお花畑でミヤマキンポウゲ、イワイチョウ、ハクサンチドリ、それにこの地域特産のフギレオオバキスミレも見られた。左手に小さな親沼と標識のある沼がある。更に進むと直径2mにも満たない子沼がある。完全に高原のお散歩状態だ。旧道コースが右に分岐するとすぐに狩場山(1,520m)山頂に到る。山頂には横浜ナンバーと静岡ナンバーの主がおり横浜ナンバーはすぐに下山して行った。
西の方へは海岸の茂津多へ到る10㎞の登山道が続いている。帰路は旧道コースを通り東狩場山経由で賀老高原に下る予定だったが旧道は荒れているそうで、おまけにガスではルーとファインディングも思ぼつかず、地形的に雪渓もありそうなので危険を回避し、涙を呑んで来た道を引き返した。到着点の見えない雪渓横断も一度通れば強いもの、大体の目星は狂いなく夏道に繋がった。
9合目辺りで静岡の男性に追いつき泥濘の道を下る。折角来たのだから賀老の滝へも行くように薦めておいた。登山口の直前にあった滑滝で靴を洗い、駐車場で一足先に下りていた横浜ナンバーの二人に挨拶してまた長い林道を歩き賀老高原へと戻った。
下山後は千走温泉に立寄る予定だったが、余りにひっそりとし過ぎているので寂しくなりパスして宮内温泉に立寄った。気さくなご主人迎えてくれたが此の日の宿泊客は誰もいないようだった。浴槽もカビが蔓延り余りいい心地ではない。入浴後は明日登る大平山の登山口、この先道道836号線を走り河鹿トンネルを抜けるとすぐに道路は途切れ登山道となる。地図には泊川河鹿温泉と河原に温泉マークがあり、其の正体は対岸に噴泉塔、高さ2m位に噴出した温泉成分が層を成し赤茶けたい一枚岩のようになっている。其の付近に湯が出ているそうだが30℃程度で入浴するには少し寒そうだ。日が暮れると同時に車中で仮眠に入った。
2日目(7/16): 函館観光
【行 程】 ▲河鹿トンネル南口6:17=10:30上の湯温泉11:43=12:14森12:40-(SL函館大沼)-14:47函館17:25-18:34森19:20=20:58▲大峯温泉跡(車中泊)
夜半に目を覚ますと月明りがある。此れは期待できると再び寝て夜明けを待った。明け方からなんと激しい雨となり、渡島・檜山地方には大雨注意報が出た。当然大平山は中止。さてどうしよう、屋内観光施設とて無い北海道の田舎、そうだ去年の此の時期にSL函館大沼号が走っていた。ではと黒松内駅に向かったが無人駅で何の情報も得られなかった。仕方がないので長万部まで行って指定券を購入、12:40森駅発の上り列車に乗る。時間はまだある。落部から山中に入り上の湯温泉に立寄ることにした。有名な銀婚の湯へ行ったが12時からで断念、もう一軒の清龍園に入ることができた。こちらも立派な旅館で露天風呂も完備していた。(500円)
森駅前に車を置き“SL函館大沼号”に乗車、天気良ければ駒ヶ岳が綺麗に見えるのだが、車窓は諦め眠り貪りながらの汽車旅だった。森への帰りの列車は2時間半待ちで、久しぶりに青函連絡船摩周丸に行ってきた。昭和29年の台風15号(洞爺丸台風)の悲劇の展示に興味を覚え長い時間見ていると係の人が「興味があったらどうぞ」と冊子を頂いた。それにしても悲惨な事故だった。
夜になって雨脚が強くなり渡島・檜山地方は大雨警報に変わった。明日も無理か!と諦めながらも長万部岳の麓に塒を求めた。丁度道路管理者の車がゲートを閉じようとしている所で、計画を話すと、明日の6時には開けるというので奥に入った。ゲートの先には二股温泉もあり泊り客も入っているので安心だ。二股温泉の分岐の先に廃業した大峯温泉があり舗装道路は此処で途切れる。時間は21時前、此の路上で車中泊、すぐに眠りに入った。
3日目(7/17): 長万部岳
【行 程】 ▲大峯温泉跡4:58=5:03二股林道ゲート5:32~5:58うすゆき荘跡登山口6:02~6:32鉱山跡6:36~7:29長万部岳7:40~8:13鉱山跡~8:36うすゆき荘跡登山口~8:58二俣林道ゲート9:31=9:39二股ラジウム温泉11:05=11:57昆布温泉13:00=15:05小樽15:34-16:34札幌22:00-(▲はまなす)-5:40青森5:46-5:52新青森6:14-9:52東京10:33-13:15京都
【登山データ】 天候 曇りのち小雨 歩行 10.8㎞ 4時間35分 延登高 794m 延下降 794m 1座登頂
今日の山行は、90%諦めていた。ところが夜半に雨は上がり、今日は回復傾向だというので登山を決行した。朝食を取りダート林道を進む。夏草が被さり車で掻き分けるようにして進む。林道が二手に分かれ長万部岳の表示のある方向へと進む。200mも進むとゲートがあり其の手前の広場に車を置く。登山ポストがありノートに記帳しゲートを越える。暫く行くと水嵩を増した鉱山川を渡る。河原の石が赤茶けているのは鉱山の成分のせいなのだろうか。ゲートから2㎞ほどで“うすゆき荘”跡に達する。数年前までは建っていたようだが今は取り壊されて廃材にビニールシートが被せられていた。
ここが登山口とされ標識が設置されているが、此の標識以外に随分高い位置に冬山標識もある。冬山標識の方が立派で何箇所もあった。“登山道”が始まるのかと思ったが林道は未だ続き、ジグザグに緩傾斜で高度を上げる。1合目表示から頻繁に2合目、3合目と続き、ズリのようなものが積まれた鉱山跡に到る。真正面に長万部岳が聳えているはずだが雲の中、冬山用の高い位置に鐘が設置されている。打ち鳴らしてみたいが紐が短く手が届かない。傍に脚立が寝かされていたので此れに昇って打てと云う意味なのだろうか。林道は此処で途切れ完全な登山道になる。歩き出すとすぐに5合目表示がある。長万部岳の北にあるP848の麓を巻くように進むと小川を渡る。通常は優しいせせらぎなのだろうが今日は奔流のようだ。
P848と長万部岳の鞍部で稜線に乗り最後の登りは少々急。しかしお花畑でエゾキスゲの群落が目を楽しませてくれる(見分けがつかないのでエゾカンゾウかもしれない)。此の他エゾシオガマ、ハクサンチドリなども頑張っている。
長万部岳(972m)は、3等三角点「長万部岳」が設置され、大きな山頂標識のある展望の素晴らしい山だ。此の標高どっかで見たことが・・・そうだ京都最高峰の皆子山と同じだ高さだ。山頂部のガスは濃く展望は得られなかったが、ニセコ連峰、狩場山、大平山など今回行く予定だった山全てが見えるはずだ。そして噴火湾越しに羊蹄山も・・・
歩き始めて2時間ほどしか経っていないのでお腹も空かず、ポカリを呑んだだけで下山に掛った。道は1本しかなく来た道を帰る。山頂を少し下ると雲の下に出て谷越しに鉱山跡の裸地が見える。其の後方には黒松内岳が雲から顔を出している。鉱山跡に戻ると長万部岳が先ほどよりも輪郭を現し最後の花を添えてくれた。ポツポツと雨が落ちてきた。今日も雨具の下だけ穿いていたが、上もザックの上から羽織り急ぎ足になり林道を下った。
“うすゆき荘”跡に戻るとなんと登山者が二人、昨夜閉じられた麓の通行止めゲートの開くのを待ってやってきたと云う。6時に開けると言っていたのに、開いたのは7時だったそうだ。しかしこんな日によく登るものだ。自分も同類だが・・・。 さして強く降られることもなく林道ゲートに到着、一度も太陽を見ぬまま北海道山行は終わった。
二股ラジウム温泉に立寄って汗を流そう。ここは有名な温泉で施設は新しい。炭酸泉で温めになった浴槽は長時間の入浴に最適で湯治に訪れる人が多い。心地よい風呂では自然と会話が生まれ楽しい。石鹸・シャンプーは禁止で山帰りには辛いが1時間余りのんびりと会話を楽しんだ。此の湯に浸かると白い粉が吹いたようになるのでもう一度他の温泉で洗い流して帰るのだと常連の小父さんが言っていた。
小樽への帰り道、昆布駅裏にある昆布温泉龍泉閣に立ち寄り再入浴、ここではしっかり洗髪もした。小樽でレンタカーを返すのは15時、余裕で行けると予定だったが余市町内で思わぬ渋滞、給油後車を返したら5分オーバーした。幸い追加は請求されずOKだった。
快速エアポート号で札幌に向かい高校以来の友人と再会、酒を酌み交わした後22時発の“はまなす”をホームで見送ってくれた。新青森からは昨年全通した東北新幹線“はやぶさ”に乗り東京東海道新幹線に乗り継ぎ13時京都に帰り着いた。昔は13時間余り乗り続けてやっと青森だったのが早くなったものだ。
【登山データ計】 歩行 30.6㎞ 11時間30分 延登高 2,058m 延下降2,058m 3座登頂
写真: 賀老ノ滝(千走川)
写真: フギレオオバキスミレ(狩場山登山道にて)
写真: 狩場山山頂標識
写真: 長万部岳山頂標識
写真: 赤茶けた鉱山川