京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉《山紀行702》 蕎麦粒山・三頭山

青春18きっぷの季節になると奥多摩に行きたくなる。1月に行ったばかりなのに再び奥多摩駅に降り立った。今回は川乗橋から鳥屋戸尾根経由蕎麦粒山、長沢背稜、有馬山、蕨山を縦走し河又へ。そして2日目には、奥多摩から江戸小屋尾根を登り奥多摩三山の御前山と三頭山を縦走、山梨県小菅村の余沢までの縦走をを楽しんだ。

20100320蕎麦粒山・三頭山1

写真:有馬山、仁田山(送電鉄塔より)

 

 

《山紀行702》 蕎麦粒山・三頭山        平成22年3月19日(金)~23日(火)

48期 山本浩史

青春18きっぷの季節になると奥多摩に行きたくなる。1月に行ったばかりなのに再び奥多摩駅に降り立った。今回は川乗橋から鳥屋戸尾根経由蕎麦粒山、長沢背稜、有馬山、蕨山を縦走し河又へ。そして2日目には、奥多摩から江戸小屋尾根を登り奥多摩三山の御前山と三頭山を縦走、山梨県小菅村の余沢までの縦走をを楽しんだ。

 

【メンバー】 単独

1日目(3/20)  晴れ

【行  程】  3/19桂川20:30-22:31大垣22:48-(▲ムーンライトながら号)-4:40横浜4:46-7:17奥多摩7:25=7:38川乗橋7:40~9:03笙ノ岩山9:16~9:28塩地ノ頭9:45~9:51松岩ノ頭~10:38蕎麦粒山10:58~11:13桂谷ノ峰~11:57仁田山12:00~13:00タタラノ頭13:04~13:24橋小屋ノ頭13:26~13:49蕨山~13:55蕨山東峰14:07~14:22藤棚山~14:45大ヨケノ頭14:47~15:6小ヨケノ頭~15:15金比羅山15:18~15:52さわらびの湯17:01=17:40東飯能18:09-18:48△立川

【登山データ】  歩行19.9㎞ 8時間12分 延登高 1,740m 延下降 1,905m 14座登頂

20100320蕎麦粒・三頭山地図1

 

奥多摩駅ではすぐに東日原行のバスが接続し10分足らずの乗車で川乗橋に着いた。他に4人下りたが皆、川苔山(かわのりやま)へ行くのだろう。鳥屋戸(とやど)尾根を登る物好きは私だけのようだ。「日向沢林道通行止め」と掲げられたゲートを越えて尾根の先端を回りこんだ所の左手に登山道の取り付きがあった。日原川の深い谷に切れ込む奥多摩の尾根はどれも急峻で標高差がある。鳥屋戸尾根は蕎麦粒山まで標高差1,000mは余り、途中の笙ノ岩山までほぼ一本調子の急登となる。

体が重い、そう云えば今週はずっと6時間の残業の日が続き、昨日の“ムーンライトながら”は寒くてあまり寝られず疲労が溜まっている。登山道の傍らに「東京市」と彫られた標石を見つけた。東京市明治22年東京府中心部の15区を東京府東京市と称するようになり、昭和18年東京都制が布かれ23の特別区となるまで存在した自治体だ。その東京市の標石が奥多摩の山中にあるのはなぜなのだろう?

1時間20分で笙ノ岩山(1,254m)に到着、小広い山頂に展望は無く、3等三角点「北ノ沢」がひっそりと置かれていた。急登から解放され稜線歩きとなった。右側に樹林の切れ目があり木の間隠れに見えていた川苔山(1,363m)が全容を現した。今日は沢山の人が登るのだろう。地形図からすると展望地のすぐ先のピークが塩地ノ頭(約1,290m)らしい。山頂を示すものは何もなく一番標高の高いところをそれとした。続いて松岩ノ頭は1,268mの標高点でここにも山頂標識などはなかった。

蕎麦粒山の南を巻いて通る“踊平巻道”と交差すると山頂は近い。最後はまた急登で蕎麦粒山(1,473m)に到る。東京都最高峰の雲取山(2,017m)の北西から派し延々繋がる長沢背稜に乗り上がった。3等三角点「仙還」が置かれ展望良く川苔山や棒ノ折山、高水三山など一望できる。

20分の大休止の後、長沢背稜を東へと進む。この稜線は東京都と埼玉県の境界で広い防火帯が取られている。標高が1,200mを越えたあたりから残雪がちらほらと現れたが、日当たりの悪い部分では結構固まりになっている。アイゼンを付けるほどではないので慎重に急斜面を下り、登り返しの西のピークへは急登、この斜面で初めて登山者と出合った。

桂谷ノ峰(1,380m)は2つ目のピーク、特に展望も無く通過し日向沢ノ峰手前で長沢背稜から分れ埼玉県域有馬山の稜線へと歩を進める。日向沢ノ峰(1,356m)は昨年も来たので今回はパスした。雪の付いた急斜面を下り送電鉄塔に到ると切り開かれて日向沢ノ峰や棒ノ折山への稜線、これから進む仁田山、有馬山の稜線、北の方には大持山、子持山など秩父の山並みが見える。

標高1,200mまで下ると東側に伸びる林道に飛び出してしまった。切通しで壁になっているので再び尾根に取り付くところがない。ガレ場を強硬に取り付くが、土砂でズルズル滑り掴んだ岩が崩れ難渋して這い上がった。尾根上に残された道は草が被さりヤブ漕ぎ状態で仁田山(1,211m)に到達した。狭い山頂は樹林帯で展望は無い。丁度その時、有馬峠から登って来た男性と遭遇、飯能市名郷から登り始めたと云う。

仁田山の北稜線は男性の言っていた通り笹ヤブの中に雪が残り益々歩き難い。秩父市飯能市の境にある有馬峠を林道が越えている。先端の切通しの上からは有馬山の姿が美しい。有馬山はタタラノ頭(1,213m)を主峰とする総体山名でタタラノ頭南にあるピークの方が高いような気がする。タタラノ頭(1,213m)山頂には3等三角点「有馬」があり標石は角が欠け無残な状態だった。少しだけ展望が利く。

さらに縦走を続けると橋小屋ノ頭(1,163m)に到る。立派な山頂標識があり「有馬山(橋小屋ノ頭(1,163m))」とあり地元ではここを主峰としているのだろうか。展望はなく道が二手に分かれる。北に行けば秩父への縦走路でヤシンタイノ頭から大持山、武甲山に繋がる。今日は東に進み蕨山から河又に下りる。東尾根は逆川乗越で林道が交差し東屋が設置されている。標識の傍らで女性3人のグループがお食事中だった。振り返ると下ってきた橋小屋ノ頭が見える。

なだらかな稜線歩きで蕨山(1,044m)に達する。最高点は樹林帯で何もなく先を行くグループは巻道(本来の登山道)を通過して行った。名郷への下山路が分岐し300mほど進むと東峰(1,033m)がありここに蕨山の山頂標識が設置されている。“展望台”とされており大持山、武川山、伊豆ヶ岳など秩父山々の展望が良い。

西南西方向に進み次の山頂は藤棚山(920m)、3等三角点「岩茸」があるだけで山頂標識も展望も無い。大ヨケノ頭(771m)に展望はないが、その少し手前に展望個所があり逆川の谷を隔てて蕎麦粒山から日向沢ノ峰、長尾ノ丸、棒ノ折山など長沢背稜東端の山々を望むことができる。落合集落から登って来る道が合流する中登坂を過ぎると小ヨケノ頭(717m)があるが山頂を示すものは何もなく展望も無かった。金毘羅山(こんぴらさん660m)は縦走路から外れ踏み跡を行くとひっそりした山頂に達する。3等三角点「名栗」があり山名プレートが転がっていた。鳥居集落への分岐点の処に金毘羅神社跡がある。建物の基盤が残っておりその中に小さな祠があり信仰が続いていることを物語っている。

長い縦走もいよいよ終点で河又集落へと下山した。立ち寄り湯は絶好の位置に“さわらび湯”(入浴料\800)があり汗を流し人心地がついた。飯能駅行のバスは比較的高頻度で運行されている。

 

2日目(3/21) 雨のち晴れ

【行  程】  △立川5:06-6:51奥多摩6:53~8:11九竜山8:20~9:09鞘口山9:19~9:27クロノ尾山~10:03御前山10:28~10:39惣岳山10:41~11:46月夜見山11:54~12:38砥山12:40~13:46東峰14:00~14:01三頭山14:02~14:05西峰14:08~14:27神楽入ノ峰~14:45小焼山14:47~15:15向山15:18~15:50余沢15:55=16:32奥多摩16:52-17:55△立川

【登山データ】  歩行22.4㎞ 8時間57分 延登高 2,451m 延下降 2,206m 13座登頂

20100320蕎麦粒・三頭山地図2

 

夜半に寒冷前線が通過し関東地方は強風により各線に遅れが出ている。青梅線も倒木に電車が衝突し一時不通になってしまった。予定より50分遅れて奥多摩駅(標高385m)を歩き出した。国道411号丹波山村方面に進む。弁天橋を渡り奥多摩病院の横に折れると慈眼寺に達した。お寺の墓地の階段を上がり裏山の尾根の先端へと回り込み登山道に取り付いた。雨は小降りになったが、余り人の歩かない尾根なのでヤブ漕ぎもあるかと雨具に身を固めて歩を進めた。

登山地図に載っていない江戸小屋尾根を登るので取り付きがどうか分からなかったが問題なく取り付くことができ一安心。比較的しっかりした踏跡が植林帯に続き、ほぼ一本調子の登りで九竜山(くりょうさん954m)へと続く。雨も止み雲が切れだし天候回復は近い。展望の無い山頂には別名である“九重山”と記した山頂標識が掲げられている。どちらが主流の山名か分らないが昭文社地図には九竜山となっている。

一旦70m下り、970mの無名ピ-クへの登り返しとなる。岩場もあり伐採地の縁を歩くところでは東側にある鋸尾根と鋸山が一望、山頂にはまだガスがかかるがもうすぐ顔を出しそうだ。鋸尾根は昨年11月に歩き、今年1月には再び鋸山に登った。京都の山ですらこれほどの頻度で登っていないのに奥多摩に5ヶ月の間に3度も来るとは我ながら大したものだ。

鞘口山(1,142m)で奥多摩三山の縦走路、奥多摩町檜原村境の稜線に乗り上がった。整備された道となり、もう下草で濡らすこともないので雨具の必要はない。この先は1月に歩いたばかりの稜線だ。クロノ尾山(1,168m)には展望はなく通過、御前山の登りに掛かると樹林帯で残雪がある。前回ほどではないが斑に残った雪と今日の雨で登山道は泥濘んでいる。御前山(1,405m)の広い山頂には誰も居らず、風だけが通り抜け寒い。三頭山、大岳山と共に奥多摩三山の一つとされ、3等三角点「御前山」が置かれているが樹木が生長し展望は木の間越し見える程度だった。

天気が急回復し、上空は一面の青空となった。西の尾根に雪はなく快調に進み惣岳山(そうがくさん1,340m)に到る。展望はない。西北西方向に大ブナ尾根が分岐しサス沢山から小河内ダムへ到る。9年前に歩いた道だが今回は南西に下る三頭山への縦走路を進む。月夜見山の林道までは殆ど広い防火帯の稜線が続き、所々に展望地がある。しかし防火帯を挟んで北側の奥多摩町域は広葉樹林檜原村域は針葉樹の植林と見事に分かれ南側は殆ど展望の利くところはない。惣岳山を下りきる辺りは痩せ尾根の岩場で慎重に通過する。反対側から3人のパーティーの姿、今日初めての人との出会いだ。小河内峠は奥多摩湖への道と檜原村藤原から陣馬尾根を登ってきた道が越え、木の間越しに奥多摩湖が望める。

小ピークは殆ど巻道で通過し、車道との交差点に到る。青梅街道と檜原街道を繋ぐ奥多摩周遊道路で交差地点に“月夜見第2駐車場”がある。ここをベースに御前山を目指す人もいるようだ。車道で分断された登山道へは奥多摩町側へ車道を100mほど進み折り返すように取り付く。すぐに月夜見山(1,147m)に達し一息つく。山頂には3等三角点「月夜見山」があるが展望は利かない。

南へ進行方向を変え奥多摩周遊道路に付いたり離れたりしながら縦走路を進み風張峠(1,150m)に到る。切通し直下の周遊道路には風張峠駐車場がある。峠直前の切通しの縁から惣岳山と御前山を望めるスポットがあった。周遊道路は南へと離れて行き円弧を描くように東へと回り込む。砥山(といしやま1,302m)は縦走路を外れ微かな踏み跡を辿る。樹林帯の中で展望はないが陽刻の木製標識が掲げられていた。山頂からは北西に下りたすぐのところに都民の森への道が続いていた。巻いていた縦走路と合流し鞘口峠(さいぐちとうげ1,140m)に到る。檜原村都民の森からと奥多摩湖からの登山道が合流し俄然賑やかになってきた。都民の森から15分で鞘口峠へ登ることができるので、日本三百名山の三頭山登山の最も安易なルートとして利用されている。都民の森は三頭山南東側に探勝路が網の目のように付けられハイカーが訪れるのだろう。

鞘口峠からは三頭山へ向けて標高差390mの登り返しとなり、すでに14㎞あまり縦走して来た身には堪える。雪は殆どなく急登路も問題なく登ることができた。漸く辿り着いた山頂は三頭山東峰(1,528m)で3等三角点「三頭山」が設置され、東に張り出すように展望櫓が設けられている。奥多摩三山の盟峰大岳山、御前山の展望が良い。それにしても御前山ははるか向こうに遠ざかったものだ。

三頭山はその名の通りピークが3つあり最高峰は1,531mの中央峰。東峰から僅か60mほど西にある。最高峰ながら展望はなく御堂峠を挟んで向かい側の西峰(1,525m)に歩を進める。この山頂が一番風格があり東京都による奥多摩三山の標識と山梨県による山梨百名山の標識が立っていた。8年前に来た時は奥多摩湖の麦山の浮橋(通称:ドラム缶橋)を渡りヌカザス山経由で笹尾根に抜けた。その時は西峰山頂だけで中央峰、東峰には行っていなかった。これで三頭山の3ピークを制覇することができた。

時計を見ると14時過ぎ、計画では余沢17:30のバスで奥多摩の歩き出しが遅れた分を含めてコースタイムを短縮1時間40分短縮しなくては乗れないので頑張って歩いて来たが予想以上に行程が捗っている。なお1本早い15:50のバスに乗れると万事都合が良い。距離は6.4㎞、あと3つ山を越えなければならないがほぼ下り、考えることは下山後の楽しみだけ、ビールに風呂、おいしい夕食!

歩き易いなだらかな道で歩きやすい。私の主義として山道は決して走らない。ピッチを上げて歩き、神楽入ノ峰(1,447m)は山頂標識を撮っただけで通過。小焼山(1,322m)は登山道が北側を巻いているが飛ばす訳にはいかない。山頂展望はなくここも山頂標識を撮っただけで通過、P1146は登りを覚悟したが巻道がありスルーし最後の向山(1,078m)に到る。山頂域が広く一寸迷うが北側に張り出したところが山頂で古い木製の大きな展望櫓がある。しかし朽ちかけておっかないので登らなかった。その傍に3等三角点「発沢」があり最後の山を締めくくった。

余沢への下山路は急斜面をジグザグに緩勾配の道が付き距離が3倍位になる。急斜面を下れば早いが急過ぎるのと藪コギでは現実的ではなく道なりに下るしかないようだ。余沢集落へ下ってきたときはバスまであと8分、最後の難関は小菅川を対岸に渡り高い所を通っている国道139号線へ登り返さなければならない。心臓をパクパク言わせバス停に辿り着いたのは15:50バスの時間丁度だった。時刻表を確認するとバスは15:55で5分後、ダイヤが少し変わったようで5分の余裕が生じた。逆に早くなっていなくて良かった。

バスは奥多摩湖畔の曲がりくねった道を行く。対岸には三頭山や御前山が見え車窓からパチリとカメラに収めた。奥多摩駅からは休日に運転される“ホリーデー快速おくたま6号”に乗ることができ立川まで直通で早く帰ることができた。

 

【登山データ計】 歩行42.3㎞178時間09分 延登高 4,292m 延下降 4,112m 27座登頂

 

20100320蕎麦粒山・三頭山2

写真: 有馬山(タタラノ頭)(有馬峠付近より)

20100320蕎麦粒山・三頭山3

写真: 惣岳山、御前山(風張峠付近より)