久々の平日山行、先々週の余韻が覚めやらぬ鈴鹿山域に入った。前回登ったカクレグラ尾根と佐目子谷川を挟んで東側に並行する銚子ヶ口の尾根を蓼畑から登った。雨乞岳手前の杉峠で神崎川源流の谷に入り瀬戸峠登山口へと到る馬蹄形縦走を行なった。
[個人] 鈴鹿・銚子ヶ口 《山紀行676》
48期 山本浩史
久々の平日山行、先々週の余韻が覚めやらぬ鈴鹿山域に入った。前回登ったカクレグラ尾根と佐目子谷川を挟んで東側に並行する銚子ヶ口の尾根を蓼畑から登った。雨乞岳手前の杉峠で神崎川源流の谷に入り瀬戸峠登山口へと到る馬蹄形縦走を行なった。
【日 程】 平成21年4月23日(木) 小雨のち曇り時々晴れ
【行 程】 桂3:20=京都南IC=(名神)=八日市IC=風越谷登山口4:45-50=蓼畑橋5:00-09~丸山6:01-05~庭戸山6:17-21~黒尾山7:09-13~北峰8:27-31~東峰8:54-56~銚子ヶ口8:58-9:06~中峰9:14-15~南峰9:17-20~西峰9:33-38~水舟ノ峰9:45-48~大峠ノ頭9:58-10:00~深谷山10:21-22~クラシ10:50-52~イブネ11:00-19~杉峠ノ頭11:37~杉峠11:43~上水晶谷出合12:35-43~白滝谷出合14:44-15:00~瀬戸峠登山口15:53-16:00=(自転車)=蓼畑橋16:15-24=八日市IC=(名神)=京都南IC=桂19:25
【参 加 者】 単独
【登山データ】 歩行24.0㎞10時間44分 延登高 2,077m延下降 1,857m 15座登頂
国道421号線は神崎橋から鈴鹿越えの峠道が昨年の土砂崩れで通行止めになったままだ。その神崎橋から右に反れ林道に入り「御在所岳・瀬戸峠→」の案内表示に従って、さらに支線に入る。舗装されており、瀬戸峠登山口に帰りの自転車をデポし、蓼畑に引き返した。蓼畑集落の国道新道と旧道の分かれ目の蓼畑橋の袂に駐車した。
晴れるはずだったが冬型気圧配置が影響して小雨が降っている。そのうち止むだろうと雨具は着ない。尾根の先端に取り付けられた階段を登りだすが、これは登山道ではない。道はすぐになくなり方向を定めてヤブを漕ぐ。と言っても下草のほとんどない植林帯で尾根上に永源寺ダムと黄和田発電所を結ぶ送電線の鉄塔に達すると何処からともなく巡視路が現れた。踏跡に沿って登ると最初のピーク、丸山(676m)に達する。展望はない。雨が強まり仕方がないので雨具を着る。入道ヶ原の南から佐目子川の谷を越えてきた伊勢幹線送電線の真下は庭戸山(約700m)、送電鉄塔が建つピークは、流石に展望が良い。しかし周りの山のてっぺんは厚い雲に覆われている。
縦走路を南下し登り返しとなると等高線の間隔が恐ろしく詰まってきた。谷の西側の尾根を直登し登り詰めた所は黒尾山(949m)、今日初めての三角点峰で、3等「萱尾」が置かれている。雨はほとんど止んだがガスが濃く遠望が利かない。コンパスの示す方向へ忠実に進み一旦下り、南北に長いなだらかな稜線に乗ると一番高い所に「黒尾山最高点(975m)」の表示があった。この長い稜線まで黒尾山の山域と考えるのは無理があり、賛同しかねるが・・・。
銚子ヶ口へと続く尾根は馬ノ背のやせ尾根でかなりきわどい箇所もある。最低鞍部は850m位で両側が深く切れ込んだ谷の源頭となっている。1,016mの標高点を過ぎ一際高いところが銚子ヶ口北峰(約1,050m)縦走路から5mほど飛び出したところがピークで開けて展望が良い。
銚子ヶ口は本峰が1,077mで北峰、東峰、中峰、南峰、西峰の5つの支峰を持っている。予定では中峰から本峰、東峰まで行って折り返す予定だったが、北峰から踏跡を辿っているうちに中峰、本峰の北側の巻き道に入ってしまったようで本峰を見上げながら辿っていくと東峰のさらに東のコブ手前に出た。振り返ると銚子ヶ口本峰と東峰があり折り返してまず東峰(約1,070m)に到る。展望は良いが周辺の山はまだガスっぽい。
200m足らず西に行くと銚子ヶ口本峰(1,077m)、ここには3等三角点「佐目」があるが展望はあまりよくない。西へ少し下ると開けたところがあり南西方に南峰、中峰が望める。小さな谷を渡り登り返すと中峰(約1,070m)に達する。ここもあまり展望は一部だけ。縦走路を外れ南に入ると南峰(約1,070m)のピーク、ここは展望が良い。本峰や西峰を見通せる。
中峰に戻り縦走路を西に進む。北峰への分岐があるはずだが発見できず、北峰~中峰間は踏み跡が無いのかもしれない。西峰(約1,060m)は少し離れて600m先、展望は良好で北峰・中峰・南峰が布団を被ったように横たわる。北峰から休憩込み1時間の歩きで銚子ヶ口6峰を通過。次のピークは水舟ノ頭(1,067m)、少し下って大峠(1,015m)、登り返して大峠ノ頭(1,087m)と続く。
大峠ノ頭と次の深谷山の間には「舟窪」と言われる南面が大きく崩壊したやせ尾根がある。通過には緊張を強いられる。深谷山(1,022m)は展望のないピークで山頂標識は「P1022」の木のプレートにボールペンで「深谷山」と記されていた。標高1,000mほどの鞍部へ下るといよいよイブネへの登り返しとなる。急斜面を這い登るとほとんど木のない草原地帯に出る。すでにイブネの山域に這い上がったのだ。なだらかな高原歩きでまずはクラシ(約1,145m)山頂へ向かう。
木が疎らな草原状の山域で遮るものは無い。クラシ(約1,145m)山頂は360°の展望、御在所岳が近い。残念ながら山頂標識はなかった。イブネは舟底をひっくり返したように東西400m弱に渡ってなだらかな山頂域を持つ優美な山体、時刻は11時大休止を取りたいが、風邪がびゅんびゅん吹いている。馬酔木の南側を選び休んでいると何処からとも無く現れた犬が一匹、首に発信機を付けている。飼い主がいると思われたが人の姿はどこにも無くこんな山中に何か気味が悪い。
天候も完全に落ち着き雲が薄くなり時々晴れ間が見えるようになった。次のピークは杉峠ノ頭(1,121m)、2週間前歩いたのカクレグラ尾根に合流する。その手前の鞍部は佐目峠、峠であるが見晴らしよく雨乞岳が大きい。今日の縦走は平日でしかもこの山域、人に会うことは無いと思っていたが単独行の男性と遭遇! 人恋しく話をしたかったがあまりにも無愛想な人でそのまますれ違ってしまった。一体どこから登ってきたのか、さっきの犬の飼い主か?
2週間前とは言え、道の曲がり方など細かいところまでは覚えていないものだ。ただ南面の展望地は前回と同じだった。眼前に見える雨乞岳の違いは前回あった雪渓が完全になくなっていたこと。鈴鹿に吹く風は冷たくとも、もう春なのだ。
誰もいない杉峠は通過して神崎川源流の谷筋、千草街道を下る。近江の国甲津畑と伊勢の国千草(千種)を結んだ間道、かつて密かに岐阜に帰る織田信長を六角承禎の密命を受けた杉谷善住坊が鉄砲で狙撃した隠れ岩は史跡として甲津畑に残る。もう一つ歴史を刻んだ遺跡は佐目峠からの谷と出会うあたりにある御池鉱山遺跡、これは明治期まで操業していて、最盛期は300人ほどが暮らしていたそうだ。そしてこの山中に尋常小学校もあったらしい。建造物は一切残っていないが、多数の石組み、階段跡などが往時を偲ばせる。
神崎川はイブネ北端から派生する尾根の先端にある872mピークの東に大きく迂回しているので、ピーク手前の小峠越えで短絡する。谷筋へとテープに導かれ入って行ったが踏跡は無い。細く水の流れる谷を遡行し小峠(標高835m)へと這い上がるが、その寸前右側から踏跡が現れた。峠を越えるとまた谷を下る。水の多い山域で10mも下ると水流が現れ沢の中を歩く。100m余り下ると御在所岳すぐ北の国見峠から発する上水晶谷との合流地点で再び神埼川に出合う。本来そのまま左岸を進めばよかったのだが対岸にあるテープに惑わされ、神崎川本流を靴を脱いで渡渉し、タケ谷出合まで右岸を歩いた。
そろそろ左岸に戻り正規のルートを進まねば流量の多い本流を渡れなくなっては困るので再び渡渉する。ここで横着をかまし浅瀬を助走し深みをジャンプで飛び越したまでは良かったが着地で右足を痛めてしまった。でもなんとか歩行けそうで、そのまま歩く。道は高巻きと枝沢の横断で結構アップダウンがあり気が抜けない。下水晶谷と出会う大瀞では本流に橋があり鈴鹿主脈の中峠へ行く道が分岐するが、通行止めになっていて本流を渡渉しろと別ルートが設けられていた。
左岸をそのまま進みヒロ沢出合に達すると道は右岸へと渡る。しかし橋は無くまた本流渡渉だ。枝沢を集め水量は増々多く、流れも早い。浅瀬を選んで裸足になるのは危険なので靴のまま突入、対岸で靴下を絞った。ハト峰峠への道が分岐しているはずだが道は無い。ヒロ沢をそのまま登るのだろう。
ヒロ沢と白滝谷の間は両岸が切り立ち、谷が深く登山道は必然的に高巻きの連続となる。そして高低差もあり、本流は天狗の滝で一挙に高度を下げる。この滝は見ものでロープを伝って少し下ると正面から見ることができる。この先もゴルジュが続き、そして登山道はと言うと岸壁の上まで高巻いて越える。尾根の張り出しを乗り越し下りきると白滝谷出合。
ここは最後の試練、またもや本流渡渉だ。流れは早く深い。昭文社は良くもまあこんなルートを赤実線道で記したものだ。しかも地元の建てた看板は「鈴鹿ハイキングコース」とある。気軽な登山者は受け付けられないだろう。とにかく無事に渡るためには流れの緩やかな所を選ばなければならない。太ももまで水没しどうにか渡渉することができた。雨の後では絶対無理だろう。上空にはワイヤーが張られ滑車がさび付いて真ん中に垂れ下がっているが以前は渡渉に使われていたのだろうか?
もう本流は渡らない。一安心したがまだまだ神埼川沿いの険しい道は続く。ジュルミチ谷を越えてしばらく行くと神埼川と離れ瀬戸峠への登りとなる。これも沢筋で水とは縁が切れない。瀬戸峠との標高差は130mこれが結構堪える。杉峠から10キロその殆どが沢沿いの道で疲れた。瀬戸峠から急な道を下りきると登山口で夜明け前にデポした自転車が待っていた。
蓼畑橋まで5.2キロほぼ下りで殆どペダルをこがずに進んだが神崎橋からしばらくは登り返しがあった。立ち寄り湯は京都の伏見やまとの湯とした。永源寺温泉八風の湯は高かったので敬遠した。
渡渉で痛めた右足は翌日になるとびっこを引かないと歩けなくなり整形外科に掛かった。幸い肉離れと言うことでシップ薬をもらいしばらく休養することになってしまった。
写真2: イブネ(クラシ山頂より)
写真3: アカヤシオ(ヒロ沢出合付近にて)
写真4: 神崎川本流渡渉点(白滝谷出合にて)