京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2974 冬山入門「八ヶ岳」

山頂に到着

赤岳山頂に到着

 

 

2009年12月25日(金)~27日(日)

冬山入門「八ヶ岳

      51期 T

【参加者】CL丸山弘(装備、食糧)、SL上坂淳一(気象)、AT(記録)、小松久剛(気象) 計4名

【天候】曇り/晴

【記録】

12月25日(金)20:10JR山科駅前→24:00頃 美濃戸山荘駐車場着 仮眠

  12月26日(土)6:30美濃戸山荘発→9:50行者小屋着テント設営→11:30 赤岳鉱泉着 ジョウゴ沢でアイスクライミング&雪上訓練(アイゼンによる急斜面のクライムダウン)→16:15行者小屋帰着

  12月27日(日)4:00起床→6:00行者小屋出発8:20赤岳山頂→9:50行者小屋着 テント撤収→11:35南沢小滝 アイスクライミング練習→2:30美濃戸山荘駐車場 入浴(原村)→17:00頃 原村出発→22:00京都帰着

 

12月25日の午後8時頃、JR山科駅に集合。丸山CLの車で美濃戸山荘駐車場へ向かう。積雪はほとんどなく、無事駐車場へ到着、駐車場にテントを設営し仮眠をとる。

 

翌26日、天候は雪(降雪量は少)。5時ころ起床、朝食をとりテントを撤収。10時頃行者小屋に到着、テントを設営し、テントの中で小休止のあと、ジョウゴ沢へ出発。

ジョウゴ沢にて小一時間ほどアイスクライミン練習。その後、ジョウゴ沢脇の斜面にて、アイゼン、ピッケルによるクライムダウンの練習。

その間に天候は回復し快晴になった。

午後4時過ぎ頃に行者小屋テント場へ戻り、夕食(豚汁鍋、アルファ米など)をとり、午後8時ころ就寝。

 

27日、午前4時起床。天気は快晴

朝食(餅、豚肉入りラーメン)をとって午前6時頃赤岳へ出発。

地蔵尾根は、夏道の鎖や階段などが積雪に完全に埋もれることなく露出しているので、非常に明瞭であり、また終始トレースもついていたため、容易に登ることが出来た。

 

午前8時ころ、赤岳山頂に到着。

快晴のため、富士山や八ヶ岳の山々、アルプスの山々などの展望は抜群であった。

帰りは文三郎尾根から下山し、午前10時ころに行者小屋へ戻る。

テントを撤収して出発し、午前11時半ころに南沢小滝へ到着。

南沢小滝には先にアイスクライミングをしていた4パーティーにまじって、一人一本ずつアイスクライミングの練習をする。

午後2時半ころ、美濃戸山荘の駐車場へもどり、温泉入浴後帰京した。

 

【CL所感】   43期 丸山 弘

毎年「登り納めは冬山で」と計画しているが、昨年西穂にご一緒したTさんから早々に参加希望があり、冬山が初めてという小松さんも参加されるということで、慣れた八ヶ岳で「入門編」として無理のない計画にさせていただいた。今回は4人参加なので、食糧計画や装備・役割分担も合宿に準じた形態とした。上坂さんが超強力SLとして参加してくださったので大変心強い例会だった。実施の一週間前に八ヶ岳東面で遭難が発生し、2名とも亡くなるという残念な知らせがあり、我々も行動に慎重を期した。

行程はTさんの記録の通りだが、リーダーとしての感想を述べておきたい。

〈計画と準備〉

 計画書の作成はたたき台を12月集会後に作成し、参加者と理事にメール送付し、メンバーとの調整後、実施一週間前に正式な計画書を提出した。秋房さんが不参加となったため直前の変更はあったが、日程としては妥当と思う。装備については無線・ビーコン・ゾンデ棒が個人装備に入れられないのは冬山としては批判もあるところだろう。今後にむけての課題である。

テントの借り出しと点検を一週間前に行い、ポールの不足を発見した。逆に、前回使用したままと油断して点検不十分だった張り綱が一本不足しているのに気付かなかった。点検の重要性を再確認した。

行者小屋なので重量面では無理がきくし、実際、共同食糧についてはさほど軽量化を目指さなかったが、将来的に北アルプス稜線での行動を考えると、パーティー全体の軽量化と装備管理は必要と思う。

〈トレーニング〉

今回は山域から考えて、準備山行として初冬期の偵察はしていないが、本格的な雪山に行くには、秋から初冬にむけての偵察を行いたいところである。その時期に休みが取れない悩みは未解決のままだ。ボッカ・アイゼントレも上坂さんの金毘羅例会に助けていただいた。私自身も12月に入って一人で愛宕山ボッカを行い、一週間前に小松さんと金毘羅でアイゼントレをするのがやっとで、組織的なトレーニングはできなかった。ベテラン会員の皆さんには怒られそうだが、最低限の意識だけでも将来の例会や合宿につなぐほかはあるまい。

〈実施当日〉

 気象担当の上坂・小松氏より報告を受けつつ八ヶ岳へ。幸い回復傾向である。美濃戸駐車場には順調に到着した。行者小屋までの登りは約3時間なので南沢大滝分岐で一本立てて長めの2ピッチでと思っていたが、初日の重量への慣れを考えて、3ピッチに切った方が良かった。

雪上でのテント設営の注意事項や強風時のテント設営の注意事項は点検時に伝えたが、ポール袋が一時行方不明になったり、竹ペグの位置や張り綱の結び方が事前に講習できていなかったなど実施面ではやや甘いところがあった。

 午後はジョウゴ沢でアイスクライミングの練習と急斜面のルンゼの登り降りを実際にやってみて、ピッケル・アイゼンの使い方を練習してもらった。斜度に応じた歩き方やアイゼン・ピッケルの刺さりにくいアイスバーンの硬さを実感してもらえたと思う。

 夕食は豚ナベに続いてウイスキーで宴会となり楽しめた。冬はやはり温かくて水分がとれるものがうれしい。問題点としては2発のコンロを使用したのでやや酸欠になった。気づけたのは上坂さんの用意したロウソクと敏感な小松さんの感覚のおかげである。過去にもテント内での酸欠による死亡事故は多いので十分注意したい。

 夜は快晴ながら気温はさほど下がらず、風もほとんどなく快適なアタックとなった。

地蔵尾根から山頂への登りも順調。稜線でのどかに行動食をとったり写真をゆっくり とれたのは久しぶりで、大変幸運だった。

 視界・トレース・風雪のいずれも恵まれた場合は簡単だが、八ヶ岳程度の山でも、どれかが欠ければ急に難しくなる。

トレースがないとラッセルとルートファインディングが難しくなるし、積雪が多いと地形の特徴が隠され、視界不良の場合は、遠くの目標物がとれないのでますますRFが難しい。ルートミスに強風や低温が重なれば、遭難の危険も高まる。悪条件を想定して、下降時のルートファインディングの練習を行った。強風低温の登攀中は地図やコンパスを出すこと自体無理だし、そもそも地図には細かい地形は載っていない。目の前の岩稜を左右に巻くか直登するか、支稜やルンゼのどちらを行くかを判断するには、事前の資料の読み込みのうえで、経験に基づいたその場その場での判断力が必要だが、そういう意味でも無雪期の外岩でマルチピッチのリードをしながらルートを読む練習をするのが有効かと思う。剣や穂高の岩稜縦走にも役立つだろう。

 赤岳で展望を楽しみ、順調にテントに戻り撤収、その後南沢小滝で各自アイスクライミングを楽しんで下山した。

終了点が混雑しロープが錯綜していたのと、オーバー手袋で両手にバイルを持った状態で懸垂下降をセットしたので懸垂に手間取ってしまったのは反省点である。できれば今シーズンはもう少しアイスクライミングの上達を期したい。赤岳鉱泉のアイスキャンデーでもいいので技術的にもレベルアップしたいものだ。

最後になるが、初めての雪山でも気力体力・両面で元気に参加してくれた小松・T両氏と、常に行きとどいたアドバイスをいただき、山行を支えていただいた上坂SLに感謝したい。

 

<感想>48期 上坂淳一

 もう来ることはないだろうと思っていた八ヶ岳を数年ぶりに訪れました。

 かつて、芳野満彦は足を失い、小西政継が裸足で逃げ出し、またピオレトラクション導入などの、数々の伝説の舞台となったこの山域も、今では、大量の積雪に閉じ込められる惧れがなく、安全なテント場をベースにコンパクトな行動ができる初心者向の冬山ゲレンデと言われています。

 久しぶりに歩いて感じたのは、功罪半ばすると言いますか、やはり「山屋がいない」ということです。

 冬山歩行では、あとから来るかもしれない見ず知らずのパーティを想いながら、RFはもちろんのこと、より歩きやすいステップを切って登ります。そこに先行者と後続者の無言の交流が生まれてきます。先行者のつけた美しいトレースを使わせてもらうときに感じる人の温かみを知れば、誰しもいつかは自分も先行者となって、自分の持てる技術をステップに刻みたいと思うようになります。

しかし、レジャーランドと化したこの山域では自然を共有するという感覚の乏しい人たちが大量に流れ込んで、不必要なアイゼンの爪痕だけが残されています。指導者やガイドブックにも問題があるのかも知れませんが、現代の登山事情の一端を見せつけられた思いがします。

南八ヶ岳西面は冬山の疑似体験施設としては重宝するところもありますが、登山文化とは異質な感覚、あたかも初めて都会を訪れた農夫が、驚きとともに感じる、よそよそしげな人波への違和感にも似た戸惑いを覚えるのは僕だけでしょうか。

今回はSLに指名されました。よく考えてみると、入会以来、初めての副官任務で、送られてきた計画書を読み返し、初心者との意思疎通や、装備や食糧などCLの負担をできるだけ少なくしようと思いましたが、何もできないうちに日程が来て、結局CLにおまかせになってしまいました。

改めて皆様にお詫びするとともに次回はきちんと仕事をしたいと反省しています。

 

52期 小松久

「雪山」というと僕にとっては自分が登る山、というよりは「憧れ」「いつか登ってみたいところ」と言う夢のようなものでした。この度、集会に参加したことがきっかけで、急遽雪山例会に参加しましたが、皆さんのサポートがあったことはもちろんのこと、天候が良かったこともあり無事赤岳登頂を果たすことが出来ました。

これによって、雪山が遠い遠い彼方の目標ではなく、努力を続けていれば手が届く目標であることを実感しました。

今回雪山に行って雪上歩行技術、ロープワーク、テント技術、読図、天気図、パッキングなど、自分はすべてが不十分であることがはっきりしました。

いつか、あの真っ青な空と真っ白な木々、神聖な色に包まれた山並みを自分の力で見ることができるようになるために、これから精進していきたいと思います。

エイトノットもまともに結べない、ピッケルの持ち方も知らないような僕の面倒を最初から最後まで見てくださった、丸山リーダー、上坂サブリーダー、Tさん、本当にありがとうございました。

文三郎尾根から下山

文三郎尾根から下山

 

アイスクライミング練習

イスクライミング練習