京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3935 南八ヶ岳テント泊例会 ※テント泊ポイント

2021年12月29日(水)~30日(木)

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行者小屋前のテント場

【場所】長野県 南八ヶ岳

【メンバー】CL 43期 丸山 弘 62期 FD 63期 TM 64期 KM 計4名

【行程】29日(水)〈晴れのち雪〉

3:30 山科丸山宅出発―5:30 S.A.で朝食―9:00 やまのこ村駐車場―11:30 行者小屋前テント場 テント設営―13:00 文三郎尾根を登る―14:30 赤岳主稜へのトラバース点まで登ってから下降開始―15:30 テント場帰着 夕食・就寝

30日(木)〈雪〉

4:00 起床 朝食―6:20 テント場発―6:50 中山展望台着 簡易ハーネスと補助ロープを用いた雪壁での確保練習、ビーコン操作練習―8:00 テント場帰着 天候回復せず撤収開始―9:20 テント場発 南沢を下山―11:00 駐車場着―11:30 原村もみの湯で入浴―12:30 帰路につく―19:00 山科駅解散

【記録と感想】CL43期 丸山 弘

近年は合宿がなかなか実施できないため、新人カリキュラムの「合宿ポイント」は「共同テント泊2回」で代替できる規定になっています。

ソロキャンプを楽しむ会員は多いと思いますが、多人数でパーティーを組んでテント泊で登る場合(特に冬季)は共同テントを使わざるを得ません(狭い雪尾根に4人で4張りのソロテントを張るとするとスペースも不足し固定や防風壁づくりなど設営作業が大幅に増えるのに、それぞれの耐風力や耐寒力は低下)ので、その際の「共同テント特有の生活技術・ローカルルールとマナー、共同装備・共同食などの準備や分担のしかたとチームワークを学ぶ」のがテント泊ポイントの趣旨です。

今回はアプローチが短く、風雪等の条件が緩い行者小屋前のテント場を利用して例会を実施しました。

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中岳の彩雲

美濃戸口の駐車場はもちろん、美濃戸も赤岳山荘駐車場はすでに満車、一段下の「やまのこ村」になんとか駐車できて助かりました。恐らく数百人入山していたと思われますが、大半は赤岳鉱泉小屋+テント場に行ったようで、営業していない行者小屋前はテントも十数張りと余裕がありました。今回はテント泊ポイントですので、練習した内容と注意点を参加者の復習用に記録しておきます。

【設営から就寝までの注意点】

① 整地 出入口の向き

前日に積もった新雪が膝程度あり、前日のテント跡も使いながら整地して拡張。吹きおろしの風向きを考慮して入り口は西向きにしたかったが、通路が東側にしかなく、やむなく東向きに設営(やはり吹き流しが中に膨らんで厄介だった)

②テントの固定

稜線は雪煙が上がっていたが、テント場も5m程度の風はあり、装備点検会での深雪・強風下での設営練習の意味を理解していただけたと思う。今回は土嚢袋は用いず、十字ペグを埋める方法を練習した。踏み固めにくい柔らかい雪なので、踏み固められた場所の硬い雪を掘って運んでペグにかぶせる方法をとった。

ピッケル・アイゼン・ストックなど

夜間の積雪で埋もれた場合に備えて、見失わないようまとめて刺す。(ピッケルをペグの代わりに使うこともあるが、翌日テントを置いて行動する場合は不可)

④靴とスパッツ

凍結防止のためテント内へ入れる。(雪を払うタワシ必携)

⑤スコップ

氷化した雪も掘れる強度と切れ味のあるものを用意し、テント設営後は夜間の除雪に備えて入口横にさす(靴を履く時の手すりにもなる)

⑥テント内の荷物の置き方

個人装備をザックから出して散乱防止のため40ℓ程度のスタッフバッグにまとめ、生活時は90㎝×90㎝4個の田の字型に分割して荷物を置き、真中を調理スペースとする。 

⑦水の確保

行者小屋前なら凍っていなければ水場があるが、尾根に張る場合は雪しかないので、今回は水場の水を使わずに雪を溶かした。暗くなる前に土嚢袋などにきれいな雪を必要量(今回は約2㎏×4名分=8㎏ 夜間や朝に雪の補充をしなくても良いように計算)とってきて入口横の前室に置く(大き目のポリ袋でもよいが破れたり滑って動いたりするので土嚢袋が最適)

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⑧コンロの使い方

二酸化炭素による酸欠や不完全燃焼による一酸化炭素中毒に注意して、換気をしっかり行う。4人テントでも2台まで、大量の雪溶かし水はぬるま湯までにして、必要分ずつ汲んで、もう一台のコンロで沸騰させて使用した。燃焼中や消火直後のテント内移動や調理中のコッヘル手放しは厳禁。

ガスカートリッジは冬用のもの。寝る時は体で保温。コンロはイグナイターが点火しないことも多いのでマッチか火打ち石式ライターも準備。雪から大量のお湯を低温下で沸かす場合はガス量が増えるので余裕をもって準備したい。

⑨就寝時

就寝時は45㎝×180㎝(実際は底辺60㎝30㎝の台形)の4列になるように荷物を縦長に置く(ザックは中身を抜いて下に敷く)。夜中にトイレや雪かきに出る人を想定して寝る場所を決める。寒さに弱い人は冷える壁面を避けて真ん中にはさむ。調理時に作ったお湯は、最後に各自のテルモスに入れて夜間の飲み水にし、余ったら凍結防止のためシュラフの間に挟む。夜間は荷物を探れないのでヘッドランプと必要なものを手元に準備。スペースの関係で一斉就寝、一斉起床が原則。

【起床から撤収までの注意点】

⑩ 起床時

出発2時間前をめどに一斉起床。人が多いとトイレが混むので出発までに時間差で。トイレの無い場所で張る場合は滑落や迷子に注意。起床と同時にシュラフをたたんで田の字を復元する。朝は寒いのでヤッケ着用も。

⑪朝食時

湯沸かしからスタート。全員ができるだけ同時に食べられるように配慮。

食事とコーヒーが終わった時点で必要なお湯の量を計算して最後に沸かし(熱湯でなくてよい)、テルモスに配給(厳寒時はペットボトルでザックに入れていると凍って飲めない)

⑫出発準備

テント内で靴を履きスパッツを付ける。(雪の無い場所で作業した方が容易で、屋外にいる時間を減らせる)。テントを置いていく場合は必要な装備を確認してザックに入れる。(縦走時は全装備)テントを出てアイゼン装着など装備を整える。凍ったアイゼンは短時間で手をかじかませるので、暗くても冷たくても手袋をして手早くできるように。アイゼンを履いた人はテントに戻れないので待たせて寒い思いをさせないように。

⑬ 撤収

必ずアイゼンを外して撤収。装備を雪の中になくさないように注意して個人装備とザックを外に出し、室内の点検。設営と逆順に風にテントを飛ばされないように撤収。

今回はペグの結びが甘く、夜中にほどけ、一本見失いかけたがFさんの執念で発掘していただき無事回収できた。雪がついたテント類は、風雪時のオーバー手袋の作業では元の袋に入れにくいことが多いので、大き目の別袋を用意しておきざっとしまう。今回は土嚢袋を使用。忘れ物やゴミを残さないよう点検して出発。

前日までの寒気が少し緩んで、次の低気圧が来るまでの初日の15時前にピークを踏めないかと急ぎましたが、私の体力不足で登りペースが遅く、2時過ぎには中岳分岐から上がガスに隠れ、風も強まったため、登頂を諦め、阿弥陀北稜や赤岳主稜、横岳西面の諸ルートの形状や取りつきを観察して終了しました。

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文三郎尾根下部から見上げる赤岳

夕食は各自工夫したフリーズドライ系で簡単に済ませました。コロナが済んだらぜひ今度は鍋物を囲みたいと思います。食後は少しだけお酒も嗜んで早めの就寝となりました。

夜中から降り続いた粉雪はテント場で20㎝程度。樹林帯でトレースが7割方埋まっているので上は全部消えているでしょう。夜明け前に元気に出発する組、撤収して下山や縦走に出かける組、テント内で様子見組などテント場も様々でしたが、我々は6時に中山展望台へ向け出発。

展望台手前の少し急な斜面を使って立木やピッケルを支点としたロープ確保の練習を交代しながら行いました。

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ムンターによる支点ビレイ中のFさん

スタンディング・アックスビレイを今後使う機会があるかどうかはわかりませんし、実用に使えるまで練習するのも大変ですが、風と低温の雪中でオーバー手袋のままロープやカラビナを触って練習することは街では難しい体験なので、少しは意味があるかと思います。

その後ビーコン操作も少し練習し、8時にテント場に戻ったものの、朝から一度も山は姿を見せず、次第に風雪も強まってきたため、それ以上の行動はカットして撤収下山としました。

帰路の高速道路が渋滞で遅れたため、早仕舞と相殺して午後7時に解散できたのはラッキーでした。

今回は62期から64期の3名の比較的新しい会員さんと初めて雪山をご一緒しましたが、皆体力もあり、装備も適切でしっかりテント生活もこなしていただけました。車内でのお話も楽しく眠くならずに運転できました。どうもありがとうございました。

今回は私がブレーキでしたが、また好天時にピークを踏んでいただければ幸いです。

 

【感想】63期 TM

雪の舞う行者小屋でのテント泊でした。テントの設営から、荷物の整理の仕方、雪を溶かしてのお湯作りなど、あらためて学ぶことがたくさんありました。

テント設営では、まず雪面を水平にならすことがなかなか難しく、また丸山さん手作りのペグを雪のなかに埋める作業も、柔らかな新雪では抜けやすく、硬い雪を掘り出すなど、工夫が必要でした。荷物を整理して置くようにすれば、4人用テントで4人寝ることができ、夜間のテント内は意外に暖かく過ごせました。

文三郎尾根を登る途中で青空が覗き、白い稜線にかかる太陽に、雲が虹色に輝いてみえたのが心に残りました。トラバース地点から眺める赤岳主稜のルートは相当な迫力がありました。

立木やピッケルを使ってのビレイは、実際に体験してみると、立ち位置、体の向きなどを正確にとるには、仕組みをしっかり理解しておく必要を感じました。

テント泊装備を背負っての行者小屋までの往復が思いのほか辛く、体力をつける必要を感じました。また、下りが苦手なのですが、ピッケルの持ち方や使い方、アイゼンの使い方も教えていただいたので、これからに活かしていきたいと思いました。

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スタンディングアックスビレイ中のTさん

【感想】62期 FD

二年前の八ヶ岳例会では、文三郎尾根を登り切ったところで突風に襲われ、撤退を強いられた。今度こそはと臨んだ今回の例会だったが、またもや天候に恵まれず、無念の撤退となった。

一日目は正午過ぎに南沢から行者小屋前に入り、テントを設営した。積雪は豊富で、年末の寒波による新雪が軟らかく、整地とペグの設置に思いのほか手間取った。前回の例会は雪を入れた土嚢をうめるやり方だったが、今回は丸山さんお手製の竹ペグを使ってテントを固定した。さらさらの乾雪を踏み固めるのは至難の業で、締まった雪をかぶせようとの丸山さんの判断で、ようやく一夜の宿を完成させることができた。

この時点で一時半。すでにピークハントは不可能な時刻だったが、翌日の登頂に備え、下見を兼ねて尾根道を歩くことになった。行者小屋の到着時にはたしかに見えていた青空は、いつのまにか薄雲に覆われていた。

シラビソの林を抜けると、文三郎尾根のとりつきから稜線の方向に見事な彩雲が見えた。この彩雲は、前回の例会でも中岳沢で見えて感動したのだが、後で調べたところでは「天気下り坂のサイン」らしい。

はたして天候は悪化し、赤岳のピークは靄につつまれて風も強くなってきた。結果的にテント場の出発が遅れたのは幸運だったかもしれない。その日は尾根で丸山さんに主稜のとりつきなどを教えていただき、早めに撤収した。

天候は翌日も回復しなかった。単独なら無理を押して登っていたかもしれないが、「五分五分なら撤退する」という丸山さんの格言にしたがい、ロープワーク、ビレイの取り方、ビーコンの使い方などを教わって早めに撤収した。

帰り道、諏訪のあたりで猛吹雪になった。高速の通行止めも懸念されたが、何事もなく雪国を抜け、年末の帰省ラッシュにもかからず19時には京都にたどり着けたのは、丸山さんの判断のおかげだ。

目標の赤岳には登れなかったが、テント設営、共同テントでの生活、ビレイと、何より荒天時の判断を学ぶことができて、とても有意義な山行になった。

丸山さん、ご指導いただきありがとうございました。KさんとTさんも、またご一緒できるとうれしいです。

 

【感想】64期 KM

入会してちょうど半年が経ちましたが、私が入会しようと思った理由の一つが雪山の技術習得でした。そんな中、冬の八ヶ岳テント泊の例会が上がり、是非とも参加したいと思い、すぐ参加希望を出しました。初日はやまのこ村より行者小屋まで、以前自分が歩いたときの印象とは違い、ザックの重さのせいかなかなか着かなくて遠く感じました。

テント場では跡地を拡張して設営しましたが、雪が柔らか過ぎて埋めたペグを沈めるのに時間がかかってしまいました。雪質でこんなに違うとは驚きでした。

翌日は風雪予報で登頂出来るかわからないためこの日のうちに少し登っておこうということで、文三郎尾根を登りながら丸山リーダーにバリエーションルートを教えてもらったりしました。登り始めは青空で彩雲も見れて綺麗だったのが段々と真っ白になってきて、赤岳山頂が近くに見えましたが残念ながら時間切れで撤退となりました。

晩ご飯では自分のバーナーが寒さで点くのか心配でしたが、持参したライターで火が付き一安心。丸山リーダーが集めた雪で水を作って下さいました。雪は溶けるとあっという間に量が減るのが不思議でした。今シーズン一度は自分でやってみようと思いました。

4人用テントに4人で寝るので、各自ザックを足の下や頭の下に敷いたりして、寝る準備がなかなか大変でした。私は寒くないように真ん中で寝させていただいたおかげで全然寒くなく夜中は暑いくらいでした。八ヶ岳の寒さにビビってましたが、この日は気温もそこまで低くなくて内心ホッとしました。

夜から翌朝までずっと雪が降り続いていたため登頂は諦め近くの中山展望台で丸山リーダーによる雪山講習会となりました。スタンディングアックスビレイを斜面を使って一人ずつやりました。横で見ているとやり方は理解したつもりでしたが、いざ自分がやるとなると間違ったことをしていたり、かなりモタモタしてしまいました。今回登頂は出来ませんでしたが、積雪時の共同テント泊や講習会など自分では出来なかったことが体験出来て、いい経験になりました。丸山リーダー、計画から雪山講習、車の運転とありがとうございました。また参加されたFさん、Tさん、ご一緒していただきありがとうございました。