京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

例会No.2996  福寿草を求めて霊仙山 《関西百名山シリーズNo.36》

福寿草は光沢のある黄色い花。雪解けに可憐な花を付ける。快晴の空の下、霊仙山の稜線に福寿草を求め関西百名山シリーズ例会を実施した。山頂では突然の吹雪に見舞われ“真冬”を体感し、下山路は経塚山から北西に張り出す尾根を取り、昼坂峠経由で上丹生へと下った。

20100403霊仙山2

写真: フクジュソウ(南霊岳稜線にて)

例会No.2996  福寿草を求めて霊仙山 《関西百名山シリーズNo.36》    平成22年4月3日(土)

48期 山本浩史

福寿草は光沢のある黄色い花。雪解けに可憐な花を付ける。快晴の空の下、霊仙山の稜線に福寿草を求め関西百名山シリーズ例会を実施した。山頂では突然の吹雪に見舞われ“真冬”を体感し、下山路は経塚山から北西に張り出す尾根を取り、昼坂峠経由で上丹生へと下った。

【メンバー】 國領孝子L、葛城美知子、井上純子、向昌宏、畑中里子、辻博史(体験山行)、TC山本浩史

【天  候】 晴れ一時吹雪

【行  程】 京都7:16-8:20彦根8:30=8:56今畑登山口9:04~9:55笹峠9:58~10:40近江展望台10:48~11:15南霊岳11:18~11:57霊仙山12:02~12:14西峰12:17~12:33経塚山~12:39霊仙山避難小屋13:07~13:15経塚山~15:16昼坂峠~15:36上丹生15:40=15:56醒ヶ井16:06-17:12京都

【登山データ】  歩行11.6㎞ 6時間32分 延登高 1,005m 延下降 1,180m 4座登頂

20100403霊仙山地図

天気は快晴、京都駅で体験山行の辻博史さんを交えて全員集合した。彦根まではJR琵琶湖線で一部青春18切符を使用した。セメント工場の専用線の跡にできた彦根駅東口からタクシーに分乗し多賀町河内の奥、今畑登山口(330m)へと向かった。登山口には多くの車が止められていて、おまけにマイクロバスまで入り込んでいる。人の多さは覚悟しなければいけないようだ。しかしこれだけ来ると云うことはフクジュソウが咲いていると証かと期待が膨らむ。

今回初リーダーの國領さんを先頭に歩き始め100mほど標高が上がったあたりは霊仙今畑の廃村集落で朽ちた建物が残る。昭和54年に廃村になったこの集落にはかつて17戸の住居があり、宗金寺という浄土真宗本願寺派のお寺もあったが今や人の気配は全く無い。驚くことにこの集落へは車道は通じていない。細い登山道が唯一の道であり廃村に至った経緯が頷ける。

急坂の登山道はほぼ一貫して泥濘み、靴が泥んこになる。団体が登り始めた直後のようで結構列が詰まってしまう。P712を巻くようにして平らになったところは笹峠(約695m)で支谷に下る道が右に分岐して行った。近江展望台との鞍部で休憩し今日のミッション1「近江展望台までの所要時間を予想する」を実施。地図から距離約1.2㎞、標高差320mを割り出し、34分から51分のタイム予想をした。正解者には豪華賞品が待っている。

樹林帯を抜け岩混じりの草付き斜面を見上げると、沢山の人が登っている。やがて前が詰まり渋滞状況、暫く後に続くが鈍足の三人パーティーを追い越すと後はスイスイ。途中咲きかけのミスミソウを葛城さんが見つけ、フクジュソウの葉っぱらしきものを井上さんが見つけたがさてフクジュソウの花は?と期待しながら近江展望台に到着した。

さてミッションの所要時間は42分だった。渋滞で必ずしも本当のペースではなかったが予想タイムの真ん中あたりの時間、正解者はなかったが向さんの40分が最も近かった。“豪華賞品”の「皆の拍手で讃える」を実行し暫し休憩。もう山頂域で先の方には南霊岳と霊仙山最高峰、南の方には藤原岳、御池岳の雄姿が見え遮るものはない。天気は良いが一寸雲が出てきたようだ。

暫く進むと葛城さんがネコノメソウ群生を発見。そして遂にフクジュソウを見つけた。まだ咲きかけだが花だ。そして前の方で「フクジュソウ!」と感嘆符の付いた声が。ありました、あちこちに黄色い花が咲き揃っている。この辺りから南嶺岳に掛けては群落地であるが憲彦氏によるとかなり少なくなっているそうだ。この可憐な花をいつまでも残したいものだ。

登山道は南霊岳(1,036m)の南側を巻いて通過している。一番後を歩いていたTCだけはこそっと山頂へアルバイト。フクジュソウを踏みつけないように岩を選んで足を下ろしピークを踏んだ。標識の類は一切無い。フクジュソウに夢中になっていると何時しか空から白いものが・・・埃かなと思ったら岩にあたり消えてしまう。何と雪だ。空は雲の厚みが増し雪雲に覆われてきた。今日の天気予報は一日中晴れのはず、すぐ止むだろうと高を括っていたが、忽ち霊仙山の姿は雲に覆われ強風が吹きつけ吹雪となってしまった。積もるほどではないが地面が白くなり、防寒を兼ねて雨具を着用した。

霊仙山(1,094m)では、ミッション2「藤原岳を山座同定する」を予定していたが、ガスで全く展望は無い。吹雪の中記念撮影をして2等三角点「霊仙山」(1,083m)のある西峰を目指す。立派な山頂標識があり存在感は最高峰より大きい。ただ山頂標識には「1,084m」とあるが三角点の標高は1,083.45mで通常標高は四捨五入で表わされるので1m下駄を履いている。

再度記念撮影をすると時間的にもこの辺りで昼食休憩を取りたいところだが寒くて休む気にもなれない。経塚山を越えたところにある避難小屋へと逃げ込むことにした。霊仙山避難小屋は小奇麗な小屋で、3畳程度のスペースが板の間であとは土間、周りに長椅子があるだけで土間は外の泥濘そのまま持ち込んでいる。避難してきた人たちで立錐の余地も無い混雑、やがて先客が出て行き椅子に座って昼食にありつくことができた。

この天候でルートファインディングの必要な経塚山西尾根は断念し一般ルートで上丹生へ下山することにした。ところが30分ほど休憩しているうちに雪雲は去り周りの山が見え出した。これならと予定通りのルートに戻し、経塚山(約1,040m)に登り返す。先程のガスの中で霧氷が生まれ太陽の光に輝いている。山頂からは再び姿を現した霊仙山が素晴らしい。僅か1,000m程の山頂域なのに樹林帯を抜けたこの展望の良さが霊仙山の素晴らしさだ。北の方に伊吹山が横たわっているが霞んで辛うじて見える程度だ。

ミッション3は「ビン坂峠への道をルートファインディング」、基本的に道は無い。汗ふき峠への道を暫く下り谷の括れの所から強引に草原を横切り尾根に取り付いた。鹿糞の散乱する尾根は笹が食べられてしまい育たず裸尾根になりつつあるようだ。そんな見通しの良い尾根上に数頭の鹿を発見、相手もこっちの存在に気が付いたようで、じっとこっちを見ている。「なんやなんや人間やんけ、わしらのエリアになにしにくんねん!」、「おいおいこっち来よるわ、敵わんな」、「ほな逃げよか」なんて会話があったかどうか?「ピョー」とホイッスルのような警戒音を発して斜面を駆け下り姿を消してしまった。

南の谷筋を下る汗ふき峠への下山路がまた接近するとお虎ヶ池が登山道沿いに見える。なるほど琵琶湖の形をしている。登山道側には霊仙神社の鳥居がある。岩と食べ尽くされた笹の尾根を稜線伝いに進みいよいよ先端部に到る。地図とコンパスをフル活用し下る方向を慎重に見極める。下りだすと忽ち急傾斜になり木に掴まらないと危なっかしい。

古いテープが所々に現れやがてはっきりした道跡が現れた。これは正に2.5万図に描かれた通りで嬉しくなる。汗ふき峠からの巻道が合流しなだらかになった尾根を進む。やがて昼坂峠(びんさかとうげ335m)と思しき所に到ったが、北側に林道が見える。2.5万図には載っていなくて位置関係が分からず一寸混乱。しかしコンパスの示す方向に行くしかないだろう。林道に下り少し登り返したピークに“昼坂峠”の表示、宗谷川から峠を越える登山道が林道になってしまっているようだ。峠の北側には古道が残り谷筋を下り上丹生(かみにゅう)集落(標高150m)に到る。県道に出たところにバス停があり4分後のバスに効率よく乗ることができた。醒ヶ井駅までは3㎞程しかなく、畑中さんの「駅まで歩こう」の提案には誰も乗らなかった。《山紀行704》

【感 想】  48期 葛城 美知子

目まぐるしいお天気でしたが福寿草・展望、小さな樹氷も見られ楽しい山行でした。後半の町村界尾根で、奥の稜線から鹿の群れが一列に並びこちらを見ているのが可愛かった。又笹原を横切り、ビン坂峠を目指しての道で福寿草の群生がここでも見られたが鹿の糞も多かった。鹿の領域に私たちが、お邪魔している感じがした。

【感 想】  48期 井上 純子

福寿草の群落を眺めながら、春の陽だまりハイクと決め込んでいたのに、稜線上は冬山でした。何年か前の5月上旬に来たときは快晴で、爽快な尾根歩きと展望を楽しんだ記憶がありましたが、今回は強風と寒さであまり余裕がありませんでした。とはいえ、盛りだくさんな楽しい1日だったと思います。

【感 想】 体験山行 辻 博史

「山の天気は変わりやすい」との言葉を実感した山行でした。山頂付近より雪が降り始め、おかげでこの時期にミニ樹氷が見られました。経塚山からのルートファインディングではふみ跡の無い所を歩き、このような歩き方も在るのかと楽しませていただきました。初めての参加で緊張しましたが、皆さん気さくな方ばかりで大変楽しませていただきました。ありがとうございました。

早速入会させていただきましたので、今後とも宜しくお願いします。

【リーダー感想】 48期 國領 孝子

霊仙山は個人的にとても好きな山なのでとても楽しみでした。当日はすっかり快晴だと思いこんでいたのですが、途中雪が降り辺り一面ガスが出てすっかり冬のようになりびっくりしました。頂上付近には雪渓がところどころ残っていて風が吹くとものすごく寒かったです。しかしそんな中歩いた甲斐があり黄色くて元気な福寿草に出会え喜びも倍増?したような気がします。今回TCの山本浩史さんにはずっとお世話になりっぱなしで感謝してます。ありがとうございました。そしてメンバーのみなさまと楽しい山行ができてとてもよかったです。

20100403霊仙山1

写真: 南霊岳と霊仙山(近江展望台より)

20100403霊仙山3

写真: 霊仙山山頂にて