京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3330 遭難救助訓練(比良 明王谷)

【記録】以下はすべて訓練における記録で、遭難事象は事実ではありません。救助隊の記録として(後日の保険請求等を考慮した)費用等を含む様式で記載しています。(※web原稿では一部未掲載)

なお、訓練でなければ翌朝からの捜索のためには、公的救助機関への捜索依頼を前夜中に行う必要があります。

 

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(負傷者の梱包)

 

 

(動画)

 

 

[No.3330] 遭難救助訓練(比良 明王谷)

 

【日時】2013年10月5日(土)夜~6日(日)

天候:6日 晴れ

【参加者】上坂淳一L 穐月大介 AT 奥野淳子 秋房伸一 高橋秀治 高橋幸三郎 木崎暁子 会員8名

 

【記録】以下はすべて訓練における記録で、遭難事象は事実ではありません。救助隊の記録として(後日の保険請求等を考慮した)費用等を含む様式で記載しています。

なお、訓練でなければ翌朝からの捜索のためには、公的救助機関への捜索依頼を前夜中に行う必要があります。

 

遭難救助訓練 坊村〜明王谷 記録

10月5日(土) 記録:上坂

20:10 秋房、木崎Pの個人山行下山遅延について上坂よりMLに通報。

21:57 会員に協力要請。装備について指示。

24:18 集合、配車について指示。在京本部を56期高橋、現地本部を25期穐月に依頼。

 

2013.10.6.の記録:25期 穐月大介

遭難場所:明王谷伊藤新道出会い滝付近

現地本部:坊村・市民センター前駐車場

在京本部:高橋幸三郎氏自宅

 

参加者

(捜索隊)上坂淳一(CL) 高橋秀治 奥野淳子 AT

(現地本部)穐月大介

(在京本部)高橋幸三郎

 

遭難パーティー

秋房伸一(CL) 木崎暁子(負傷者)

 

捜索・救助訓練 経緯

7:55 ロッジ前集合、ミーティング後出発、車(上坂、高橋)

 

8:55 捜索隊坊村到着

 

9:35 Tさんと合流。

 

9:40 捜索隊4名で出発、機械トラブルにより無線機は使用不可。捜索隊の特小無線機と携帯を繋いで現地本部と連絡することにする。穐月が坊村駐車場に現地本部として残る。

 

10:23 捜索隊三ノ滝到着、手掛かりなし。

 

10:55 明王谷伊藤新道出会い付近の滝にて、遭難者発見。2名とも生存。木崎さん骨折の模様。救助隊は救出に向かう。

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(負傷者の手当) 

 

*この時点で現地本部から捜索隊への携帯が通じなくなる。

在京本部から捜索隊に連絡を依頼するも在京本部からも不通。

 

13:22 捜索隊は明王谷右岸にいた負傷者を左岸までチロリアンブリッジで移動完了。

これより林道まで引き上げを開始。

負傷者は右足首を骨折。

(携帯は三ノ滝までしか通じないため連絡員が移動し連絡。)

 

14:12 負傷者引き上げのため本部穐月は伊藤新道分岐、明王谷降り口まで移動。

 

15:48 遭難者を林道まで引き上げ完了。

 

 

16:15 遭難者を坊村まで搬送。救助隊、遭難パーティー全員下山。

現地本部、在京本部解散。

 

【費用】

車代:3台、6000円

資料コピー代:230円

合計:6230円

 

【現地(坊村)本部コメント】25期穐月大介

今回機械故障で無線機が使えなかった。

無線機があれば連絡しあえたかどうかはわからないが、現地本部としては捜索隊からの一方的な連絡しか受け取れず(捜索隊は必要な時、連絡員を派遣して携帯で連絡可能な地点・三ノ滝付近へ出てきて連絡)こちらからは連絡できなかったことは、実際の捜索の場合はかなり不都合を伴うと感じた。

今回現地本部としてできるだけ装備を電子化してみましたので記しておきます。

連絡はスマホ(iPhone4GS)にマイク付きヘッドホンを差し込み音声変換でメールを送りました。完全ではないですが実用レベルで変換してくれ、文は若干の修正で済みました。またハンズフリーでメモも取りやすく電話の呼び出しも聞き漏らすことはありません。またメーリングリスト等パソコンメールと同様のメールが見れますのでほぼ通信環境はPC環境と同等でした。

記録はiPadに直接打ち込みましたので報告も楽でしたし国土地理院の地図も、会員名簿も入れて行きました。地図ソフトはあらかじめポイントを打っておけますし拡大縮小も自由なので見やかったです。

iPhoneGPSソフト(Fierd Access)も専用機と遜色のない精度で座標が取れました。ただしこの環境は車から電源が取れるアダプターと予備バッテリーは必須です。

遭難救助訓練は技量体力いかんにかかわらず、どなたが参加していただいても何かしら手伝っていただけます。遭難した時、救助したい時に必ず役立ちますので次回はぜひ多くの方が参加していただきたいと思います。

 

【感想】 48期 上坂淳一

*救助隊組織の活動について

おそらく、この部分が一番経験を必要とするところであり、かつ山岳会として押さえておきたいところだと思うが、一つの組織が機能するためには、地味で目立たないところで多くの人々が支えている。

今回の活動では在京本部、現地本部が手薄であったため、担当にはご負担をおかけした。感謝するとともに、もう少し規模の大きな、訓練でない捜索活動であれば複数配置できないとトイレや食事の時間すら不自由することになったであろう。

通信面と輸送では機材も人員も不足していた。また緊急時に備えたメンテナンスの必要性、ロスを考慮した配置の検討も必要であった。

 

*救助技術について

登山装備ならボッカでも20~40㎏以上背負うことはないだろうが、負傷者はどんなに軽くてもそれ以上であり、かつ生きている人間だということが一番厄介なことだったと思う。それを介助しながら移動させることは簡単ではない。そのためレスキューでは必要以上に面倒な手順を踏むことになる。ロープやカラビナを使うからと言ってもレスキューはクライミングとは発想の違う世界であることを忘れないでほしい。

個別技術に関していえば「救助は支点に始まり支点に終わる」ということ。その現場でいかにして強固で信頼できる支点を作るか?これはクライミングにも通じるものがある。

また今回は2つのシステムを体験してもらったが、現場に応じた作戦を決定するには、機材の強度評価や動員できる技術の種類、人力の配分など、複雑な面もあるので、なるべく多くの経験機会をとらえてもらいたい。

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【感想】 53期 高橋秀治

 思い返せば、昨年9月2日に宇賀渓の蛇谷を遡行中に「4連の滝」の途中で浮石に足を取られ、右足首脱臼骨折し、滝壺から動けなくなりヘリにてヒックアップされました。

お陰で今年の9月29日にはリベンジ出来、今日を迎えた私としては是が非でも参加したく思い、参加致しました。

上坂リーダーから集合場所から本日の訓練の詳細について説明して頂き、さらに坊村駐場では、現地対策本部設置等の必要性等を詳しく説明して頂き、何時もの山行きとは明らかに臨む姿勢が違います。

明王谷林道から三ノ滝まで、遭難者の名前をコールしながら捜査し、伊藤新道まで来た所で、ホイッスルが聞こえて来ました。

先ずはTさんが急斜面を降り、パーティーを見つけ、捜索隊もその後に続きパティーを確認し、負傷者の状況判断をし、応急手当を施し、救助体制を検討し、沢にロープを張り、チロリアンブリッジでの3分の1システム(?)で渡し、さらに急斜面を負傷者を背負って引き上げ、そして林道からはシート梱包等で搬送すると盛り沢山の例会でした。

また、在京隊には逐一携帯から連絡し、それをメーリングリストで流す等素晴らしい連携がなければ出来ない作業だと痛感いたします。

参会して改めて、昨年に救助して頂いた状況が思い返し、感謝の気持ちで一杯になった例会でした。

 

【感想】 51期 AT

久しぶりの遭難対策に参加。

2〜3年前?くらいに一度あって、久しぶりの訓練でしたが、以前の訓練があってからその後、実に様々な経験を積ませていただき、自分にとっては訓練をしていても随分重みが違うものになりました。

ご指導いただいた上坂さん、皆様、いつもありがとうございます。

 

【感想】 56期 高橋幸三郎

 今回の遭難救助訓練では在京本部の役を仰せつかりましたので自宅での例会参加となりました。実際の作業内容は現地本部との連絡係と言ったものだったのですが全く初めての上、自分一人だけなので最初は少々緊張いたしました。

 メールでのやり取りが一日中続く筈なので、伝達を取りこぼしたり遅延等を起こさないよう、念のためメーラーの着信通知の設定や携帯電話への転送等をセット。

自宅内のどこにいても作業ができるよう普段は使っていない無線ルーターやノートパソコンを用意し当日に備えました。ただ実際に活動が開始されてみると、おそらく比較的小規模な捜索隊の、しかも訓練だった事もあってか伝達作業は想像していたより遥かに少なかったため、どうにか大きな失敗も無くこなす事ができたようです。

そんな事で小生、パソコンを側に置き終日のんびり過ごさせてもらっていたのですが、後で当日の現場での写真を拝見すると随分、盛り沢山な内容の救助訓練をされていた模様。

現地へ行かれた皆様、本当にお疲れ様でした。次の機会には小生も是非、現場での体験もしてみたいと思いました。

 

【感想】 56期 木崎 暁子

例会初参加が今回救助訓練となりました。

基礎知識が乏しいためシステムを理解することは難しかったですが、連絡系統など大きな流れを知ることが出来ました。

また、人一人を救助することがどれだけ大変な労力を要するかも改めてよくわかりました。

会に入会した理由のひとつがこういった山における楽しいだけではない一面を学びたいということもあったので、前回が数年前だったと聞いてタイミング良く参加出来たことは大変良かったと思います。出来れば機会も参加者も増えることを願います。

 

【感想】 52期 秋房 伸一

 シビアすぎて誰も写真を撮れなかった「背負い搬送」について書きます。背負い搬送と聞いて、木崎さんを背負えるのは「役得」だと内心思った人もいるかもしれませんが、そんな要素はどこにもありませんでした。

まず、木崎さんと私の間には、上坂さんのザックが強固に存在していました。ザックの荷物を全部出し、上蓋を中に入れ、60cm程の木の枝複数を銀マットで巻いて、要救助者(=木崎さん)の足を支える支点としたものをセットして、その後、要救助者が載ります。つまり、背負われているのが木崎さんであっても、仮に上坂さんであっても、背負っている者には、その質量の差以外には何もわからない感覚で、ひたすら背負うというシチュエーションになります。子どもを背負うと同じ重量の荷物を背負うよりも軽く感じますが、背負い搬送の場合は、その「荷物」化した要救助者を背負うということになります。

20kgくらいのザックでしたら、背負ったままで片足スクワットはできますが、その2倍以上になりますと、急斜面で片足スクワット的に動くのは無理でした。

 懸垂下降の逆の感覚で、ロープに全体重を預け、引っ張り上げてもらう、というのは理屈ではわかりますが、実際やろうとすると、要救助者が転げ落ちそうで、自分自身も態勢が変になりそうで、無理でした。要救助者の上体を安定させるための補助スリングが、私の肩から腕に食い込み、このまま続けていると、腕が壊死するのではないかと思うくらいの負担感もありました。 というわけで、膝をつき、斜面に這いつくばりながら、まるで寺社の地獄絵の亡者のように必死でうごめく、そんな感じでした。

斜面が緩くなると、二本足歩行もできそうですが、急斜面の背負い引き上げは、なかなか難しいです。背負い引き上げの仕組みに、介助者2名がいて、要救助者の体重を横から支えてくれれば、スムーズにいくかもしれないと思いましたが、当日の参加人数では無理でした。ご参考まで。

 

【感想】50期  奥野 淳子

「遭難救助」というと、何か特別な技術や特出した能力が必要だと思われるかもしれない。実はその通りであって、遭難者の救出に向けて大変な労力が払われることを、今回参加して実感した。だが、私のように技術も体力も無い人間でも、通信連絡をする、負傷者の足にテープを巻くなど、出来ることがあった。救助の現場では、多人数の応援が必要だ。

起こって欲しくないことだが、万一、京都比良山岳会の誰かが遭難してしまったら?! その時、あなたは、ただ家で待っていられますか? 

「その人を助けるために」訓練にぜひ参加して、その時に備えましょう。